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[GDC 2009#02]「ゲームAI」とは何か? AIプログラマーのギルドがセミナーを開催
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印刷2009/03/24 19:45

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[GDC 2009#02]「ゲームAI」とは何か? AIプログラマーのギルドがセミナーを開催

画像集#001のサムネイル/[GDC 2009#02]「ゲームAI」とは何か? AIプログラマーのギルドがセミナーを開催
 AI(Artificial Intelligence)は,俗に「人工知能」とも言われ,最近のゲームにおいては非常に重要な要素の一つである。とくにイギリスでは,大学機関でもAI研究が盛んに行われており,例えば「テーマパーク」(1994年)を17歳で開発した天才プログラマー,Demis Hassabis(デミス・ハサビス)氏も,この分野の専門家だ。

 大学での研究対象である超高度な人工知能に対し,ゲームAIは賢すぎるとゲーム難度が上がる要因にもなりかねないが,それでも近年のゲームにおいて重要性を増し続けている。
 昨年(2008年)のGDCでもゲームAIに関する集まりは行われていたが,ラウンドテーブル(円卓会議)形式のこぢんまりとしたものだった。それが今回は,サミットとして丸一日が費やされるようになったというのも,注目度が高まりつつある証かもしれない。


スティーブ・レイビン氏
画像集#002のサムネイル/[GDC 2009#02]「ゲームAI」とは何か? AIプログラマーのギルドがセミナーを開催
 さて,そんなAIプログラマー達による開発者グループ,AI Game Programmers Guildが発足したのは昨年のこと。そして現在,ここでディレクターを務めているのはNintendo of Americaのソフトウェアエンジニア,Steve Rabin(スティーブ・レイビン)氏である。同氏はかつて,Gas Powered Gamesなどで主にAIのプログラムを担当していたほか,名著「Game Programming Gems」にも著者の1人として参加している。

 レイビン氏はまず,「ゲームAIとは何か」を解説。Wikipediaを引用しながら,「NPCの行動において,知性のイリュージョンを生み出すテクニック」であるとした。
 そしてこれに補足する形で,「ゲームAIは,その中身がどんなものであれ,その物体に知性があるかのようにプレイヤーを騙すテクニック」であると定義づけたうえで,さらに「開発者が事前に作成した環境のレイアウト,サウンド,アニメーションやテクスチャの変化を生成させるテクニックでもある」と,“ゲームAI”という言葉が持つ広い範囲での意味を示した。
 そして,「SimCity」で施設を建てるごとに環境や,その影響が変化していくことも,ゲームAIの一つの具体例であるとレイビン氏は語っていた。

 ちなみにレイビン氏は,SimCityの開発者であるWill Wright(ウィル・ライト)氏を高く評価しており,「Black & White」や「Fable II」で高いAI技術を見せつけたイギリスの奇才Peter Molyneux(ピーター・モリニュー)氏と共に,「ゲーム業界全体だけでなく,ゲームAIという面においても二人は双璧をなす巨匠である」とコメントしていた。

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「Forza Motorsport」は,ケンブリッジにあるMicrosoftの英国リサーチセンターで長年開発されてきたNeural Networkを実装している
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 レイビン氏によると,現在のゲームAI開発におけるトレンドは,「Behavior Trees」と「Neural Network」の二つに大きく分けられるそうだ。
 説明自体があっさりしたものだったため,ここでも詳しい解説はできないのだが,Behavior Treesとは「Halo 2」(2004年)以降に広まったシステムで,NPCの行動を枝分かれしたビジュアルで具体的に表現し,それをプログラミングしていくというもの。
 例えば,「プレイヤーがNPCに向かって突進してきた場合」に想定されるオプションをすべて用意し,さらに「プレイヤーが物陰に隠れると迂回する」とか「ヘルスが10%以下になると逃げる」といった行動を加えて,枝葉を膨らませていくというわけである。
 もう一つのNeural Networkは,より脳の動きをシミュレートしようという,ヨーロッパで盛んに開発が進められている手法だ。こちらは,環境の変化やプレイヤーのプレイスタイルを読み取りながら,個々のNPCの微妙な行動や心情の変化を表現していくというものであり,決して脳の活動を完全にシミュレートするわけではない。ゲームにおいては,Xboxでリリースされた「Forza Motorsport」(2005年)において,初めて本格的なものが実装されたそうである。
 Behavior Treesは具体的にオプションを用意しているが,Neural Networkはよりファジーな個性を表現しようとする試みであるといえるだろう。


■レイビン氏が例に出したゲームAIの歴史■
パックマン(1980) ゴーストの一つ一つの行動が異なる,初期ゲームAI作品
SimCity(1989) 一つ一つのオブジェクトが影響し合うCellular Automataを具現化
Dogz(1995) AIのあるペットを表現した初期作品
Tamagocchi(1996) ペットの世話をするというインタラクション性
Creatures(1996) Neural Networkをゲームで初めて利用した「ALife」システム
Madden NFL(1998) NPCがより人間的な動きをするとうたわれた「Liquid AI」システム
Thief(1998) NPCが視覚や聴覚を保有
Half-Life(1998) AIとスクリプティングを見事に融合
The Sims(2000) D.Normanの「The Design of Everyday Things」を具現
Black & White(2001) ペットの感情と学習能力を実装
EyeToy(2003) カメラを使ったジェスチャー・リコグニションを搭載
Fable(2004) NPCがプレイヤーの評判,過去,目的を理解
Halo 2(2004) Behavior Treesシステムを搭載
nintendogs(2005) ペットNPCの育成や学習能力を前進させる
F.E.A.R.(2005) STRIPSに似たプランニングシステム
Forza Motorsport(2005) NPCドライバーがNeural Networkでプレイヤーを学習する
Facade(2005) 自然な言語を理解するインタラクティブ・ストーリー
Wii Sports(2006) センサーを使ったジェスチャー・リコグニションを搭載
GTA IV(2008) 街の住人達の自然な群集行動パターン
Spore(2008) 五つの異なるゲームAIを一つのゲームに搭載
Fable II(2008) 家族というコンセプトを持つゲームAI
Left 4 Dead(2008) プレイヤーのスタイルや能力に合わせたDirector AIシステム
Far Cry 2(2008) 大きな世界でのNPC達の関わり合いを表現

 レイビン氏は,AIの備わったゲームには,「Manipulating」タイプ,「Interaction with Intelligent Simulation」タイプ,「Inside an Intelligent Simulation」タイプの三つがあるとする。
 Manipulatingタイプは,プレイヤーが神となるタイプのゲームで,俗にゴッドゲームなどとも称される「Populous」や「The Sims」系統のものだ。
 Interaction with Intelligent Simulationタイプは,人間の知性をシミュレートさせたプログラムとのインタラクションを楽しむもので,3DシューティングからRTSにまで応用されている。
 そしてInside an Intelligent Simulationタイプは,プレイヤー自身がAIの変化に関わっていくもので,大学の研究目的で開発された「Facade」プロジェクトなどがこれに該当する。

 レイビン氏は最後に,「どんなに巧みな能力を持っていても,ゲームデザイナーと上手く協調できないと,良いゲームは生まれない」と述べていた。以前より注目度は増したものの,開発現場の誰もがその重要性を認識しているとは言い難いゲームAIが,より理解されることを願っている様子だった。

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「Black & White」は,ペットNPCが高度な学習能力を持っていた
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Behavior Treesというプログラム手法を広めた「Halo 2」
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