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「G933s」「G633s」レビュー。Logicool Gの新世代ハイエンドヘッドセットは長時間ストレスなく聞けて,索敵能力にも優れる
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印刷2019/02/26 00:00

レビュー

新世代ハイエンドヘッドセットは長時間ストレスなく聞けて,索敵能力にも優れる

G933s 7.1 LIGHTSYNC Wireless Gaming Headset
G633s 7.1 LIGHTSYNC Gaming Headset

Text by 榎本 涼


 2019年2月26日,Logicool G(日本以外ではLogitech G)のヘッドセット新製品「G933s 7.1 LIGHTSYNC Wireless Gaming Headset」「G633s 7.1 LIGHTSYNC Gaming Headset」(以下順に,G933s,G633s)が発売日を迎えた。
 ワイヤレス&ワイヤード両対応のG933sと,ワイヤード専用のG633sという違いはあれど,新開発のスピーカードライバー「Pro-G 50mm」を搭載し,またDTS製のバーチャルサラウンドサウンド技術「DTS Headphone:X 2.0」に対応するという大きな特徴は共通だ。

G933s 7.1 LIGHTSYNC Wireless Gaming Headset(国内製品名:G933s ワイヤレス 7.1 LIGHTSYNC ゲーミング ヘッドセット),G633s 7.1 LIGHTSYNC Gaming Headset(国内製品名:G633s ワイヤード 7.1 LIGHTSYNC ゲーミング ヘッドセット)
メーカー:Logitech International
問い合わせ先:ロジクール カスタマーリレーションセンター 電話:050-3786-2085
G933s実勢価格:2万900〜2万3200円程度(※2019年2月26日現在),G633s実勢価格:1万7400〜1万9400円程度(※2019年2月26日現在)
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こちらがG933
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 北米市場でそれぞれ「G935 7.1 LIGHTSYNC Wireless Gaming Headset」「G635 7.1 LIGHTSYNC Gaming Headset」と呼ばれる両製品は,アジア太平洋市場でのみ別型番での展開となる。その点はちょっと注意が必要と思われるが,ともあれ,2015年に「Pro-G」スピーカードライバーとバーチャルサラウンドヘッドフォン技術「DTS Headphone:X」を引っさげて登場した「G933 Artemis Spectrum Wireless Surround Gaming Headset」「G633 Artemis Spectrum Surround Gaming Headset」(以下順に,G933,G633)のビッグマイナーチェンジとして登場した2製品を,ゲーマーはどう受け止めるべきだろうか。
 4Gamerでは両製品をLogitech Internationalの日本法人であるロジクールから入手できたので,テスト結果をお届けしたい。


外観,そして基本仕様は従来製品をほぼ踏襲


G933s(左)とG633(右)のそれぞれ付属品。USBケーブルとアナログケーブルが付属する点は同じだ。実測ケーブル超はG933sのUSBケーブルが約2m,G633sのそれが約2.8mで,アナログケーブルはどちらも1.6m弱だった
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 G933およびG633のビッグマイナーチェンジということもあり,G933sとG633sの基本的なデザインコンセプトは従来製品を踏襲している。G933sは2.4GHz帯を用いたワイヤレス接続と4極3.5mmミニピンケーブルによるアナログ接続,G633sはUSBと4極3.5mmミニピンケーブルによるアナログ接続に対応し,2つの接続を排他ではなく同時に利用可能だ(※同時に利用するときは,おそらく歪むのを避けるためだと思われるが,アナログ側の音量が若干下がる)。
 なので,DUALSHOCK 4やNintendo Switchとアナログ接続してゲームの音をステレオで聞きながら,PCとワイヤレスもしくはUSBで接続し,そちらでボイスチャットするといったことが変わらず行える。

 また,以下に挙げる細かな仕様においても,今回のG933sおよびG633sと従来製品との間に違いはない。

  • 左耳用エンクロージャ側面,装着時の後方寄りに集中する操作系
  • 左右エンクロージャの2か所にある,色や光り方の指定が可能なLEDイルミネーション
  • 着脱可能なエンクロージャカバー採用(※ワイヤレスモデルでは片方にUSBレシーバー兼トランスミッタを格納可能)
  • 跳ね上げると自動でミュートが有効になり,下ろせば無効になって入力できるようになるブームマイク
  • USBおよびワイヤレス接続と同時に利用できる,4極3.5mmアナログ接続端子
  • ワイヤレスモデルのUSB Micro-B端子は充電専用
  • 目盛り付きの,ヘッドバンド部にある長さ調整機構
  • “魚の開き”に対応するアームの根元

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本体側面側の操作系。上から順にスライドスイッチ,[G3/G2/G1]ボタン,マイクミュート切り換え,ヘッドフォン出力ボリュームノブという並びだ。スライドスイッチは,G933s(左)だと電源,G633s(右)だとUSB/アナログ接続切り換え用となる
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側面後方にあるラインと「G」ロゴ部にはLEDが埋め込んである。G933&G633がデビューした頃は無銘だったが,いまやLogitech G/Logicool GのLEDイルミネーション機能には「LIGHTSYNC」(ライトシンク)というマーケティングネーム付きだ
G933sのエンクロージャカバーはUSBアダプターおよびバッテリーパックのカバーとして機能する(左,中央)。G633sのカバーは取り外せるだけだ(右)
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ミュートのときはマイク部の赤色LEDが光る仕様なので,エンクロージャから引き出す場合,一度止まるところまでは赤く光ったままだ(左,中央)。そこからさらに下へ下げるとLEDが消灯し,またヘッドフォン部から「ポー」という音が鳴ってマイクが有効になる(右)
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操作系の配置と接続インタフェースの仕様はG933およびG633そのままである
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ヘッドバンドの長さ調整機構(左,中央)。デザインは従来モデルから変わったが,目盛り付きであることは変わっていない。右はアームの根元を90度回転させて“魚の開き”状にしたところだ
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イヤーパッドを外すと,Pro-G 50mmドライバーを覗くことができる
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スピーカードライバーの配置はG933sとG633sとで変わらない
 では何が違うのかだが,もちろん最大のものは,従来のPro-Gドライバー比で直径が10mm大きくなったPro-G 50mmドライバーを搭載した点にある。

 エンクロージャ自体のサイズ感は従来製品とほぼ同じで,イヤーパッドもざっくり縦方向の長さが実測約75mm,装着時の前後方向が同50mm,厚みが同20mmと変わっていないのだが,従来同様の筐体により大きなスピーカードライバ−を搭載した結果として,以下のような変化は生じている。

  • G933&G633でエンクロージャとは別のパーツだったスピーカーグリルが,エンクロージャと一体成形になった
  • おそらく搭載スペースの都合で,G933&G633だとより傾いた実装になっていたスピーカードライバーがややフラット気味になった

G933とG633で別パーツだったスピーカーグリルはエンクロージャと一体成形になった。また,以前より傾きが緩やかになっているのが右の写真から分かる
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合皮とスポーツメッシュとでまったく素材が異なるため,イヤーパッドの硬さや見た目もG933sとG633sとで異なる
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 もう1つ,大きめの変更点としては,イヤーパッドカバーの仕様が挙げられる。G933とG633ではいずれも,速乾性が高く,水分が染みになりにくいとしてLogitech G/Logicool Gが「Sports-mesh」(スポーツメッシュ,以下カタカナ表記)と呼ぶ繊維素材を採用しているのだが,今世代ではG633sが変えていない一方,G933sではイヤーパッドカバーを合成皮革生地素材に変更してきたのだ。
 ロジクールによれば,合皮を採用することにより,柔らかな素材感とより小さな側圧を実現でき,同時に低音の抜けを押さえられるとのことだが,2種類の素材を用意しておきながら,ユーザーが自由に選べないのは残念だ。G933sでG933同様のスポーツメッシュを使いたい人や,G633sで新しい合皮を使いたい人もいるはずなので,ここは保守部品の販売などで対応してほしいと切に願う。

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イヤーパッドを外した状態。内壁と外壁の素材に変化はなく,グリルカバーは少し厚みのあるストッキング状の素材という点で共通である
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ヘッドバンドの長さは実測約30mmで,その内側に,長さ実測約14mmのクッションが貼ってある。カバー素材はイヤーパッドとおそろいだ

 本体実測重量はG933sがバッテリー込み,USBアダプターおよびケーブルなしの状態で約375g,G633sがケーブルなしの状態で約343gだ。前世代モデルと比べた場合,G933sは9g,G633は3g,いずれも重くなった計算だが,さすがにこの程度では体感できるレベルにない。スピーカードライバーの口径が10mm増している以上,どこかで軽量化することで,従来製品比で微増というレベルを維持しているものと考えられる。

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 ちなみに装着した印象は思ったより軽い。従来製品と比べて重心のバランスがよくなり,また,ヘッドバンドの調整機構を気持ち長めに設定することで,イヤーパッドが耳の下側までしっかり覆って,さらに「浮かなくなった」のも確認できている。この変更は地味だが重要なポイントだ。
 G933とG633sでは前者のほうが側圧は弱く,若干ながらふわっとした装着感がある。G633sのほうがかちっとしつつ,スポーツメッシュ素材を採用しているため外の音はG933sよりはっきり聞こえる印象があった。肌当たりはG633sのほうがさらっとしていて好ましい。

 そのほかいくつか細かい違いも指摘しておくと,以下のような点が挙げられよう。

  • エンクロージャカバーやヘッドバンドカバーのデザインもG933sとG633sで従来製品から微妙に変わった
  • G933とG633ではDTS Headphone:XとDolby Audio両対応だったのに対し,今回は冒頭でも触れたとおりDTS Headphone:X 2.0のみの対応になった
  • G933ではUSBワイヤレスアダプターに3.5mmミニピンのアナログ入力端子を搭載し,入力したアナログ信号をワイヤレスで飛ばせたが,その仕様はG933sでカットになった
  • G933とG633ではマイクがカージオイド(cardioid,心臓)型の単一指向性でマイクサイズが4mm,周波数特性が100Hz〜20kHzだったのに対し,G933sとG633sでは指向性こそ同じながらマイクサイズが6mm,周波数特性が100Hz〜10kHzに変わった

エンクロージャカバーのデザインはG933とG633の「横3本ライン」からG933sとG633sで「縦方向でうねりのある2本ライン」になった。ヘッドバンド部は,中央のGロゴこそ変わらないものの,こちらも横方向のラインからうねりのある2本ラインへと変わっている
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先端部だけ伸縮するブームマイクの基本仕様は同じだが,搭載するマイクそのものは変わり,より大きく,周波数特性は狭いものとなった
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G933sのUSBワイヤレスアダプター。G933の「USB Mix Adapter」にあった3.5mmミニピン端子がなくなっている(※穴はあるが,ミニピン端子ではない)

 以上を踏まえ,両製品の主なスペックを表1にまとめたので,参考にしてもらえればと思う。

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ついにG HUBが正式版へ昇格。G933sとG633sは初の「G HUB専用デバイス」に


 Logitech G/Logicool Gは,2018年の夏に新世代の統合ソフトウェア「Logicool G HUB」(日本以外ではLogitech G HUB,以下 G HUB)のアーリーアクセスを開始していたが(関連記事),G933sとG633sの発売に合わせて,より正確に言えば北米時間2019年18日公開のバージョン2019.2.16267で正式版に昇格した。
 そしてそのことから想像できる読者もいると思うが,G933sとG633sは,従来世代の統合ソフトウェア「Logicool Gaming Software」(日本以外ではLogitech Gaming Software,LGS)に対応しない。両製品の設定を変更するにはG HUBの導入が必須だ。

G HUBのメインメニュー。なおG HUB自体はロジクールのサポートページから入手できる
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 G HUBではメインメニューから製品を選ぶと製品ごとの詳細設定メニューへ遷移する仕様で,G933sとG633sの場合は左端に並んだタイルのクリックから以下の4項目を設定できるようになっている。

  1. LIGHTSYNC:LEDイルミネーション関連設定
  2. 割り当て:[G1]〜[G3]ボタンへの機能割り当て設定
  3. 音響:ヘッドフォン出力ボリュームとマイク入力ボリューム,サイドトーンボリューム調整と,マイク入力のノイズリダクション有効/無効設定,DTS Headphone:X 2.0有効/無効設定
  4. イコライザ:プリセットおよび2バンド/10バンドイコライザ設定

1.LIGHTSYNC。初回起動時はチップヘルプが説明してくれる(左)。光り方は,「効果」のプルダウンで,常時消灯や常時点灯,色の順繰り切り換え,ゆっくりした明滅,再生中のサウンドに合わせたいわゆるグラフィックイコライザ的エフェクト,画面内で指定した場所の色を反映させる「オーディオビジュアライザー」から選択可能だ(右)
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G HUBから実際にLEDイルミネーションの色を変更したところ。左から順にブランドカラー,赤,緑,青,橙,黄,水,紫,白だが,白がちょっと青っぽいのを除けばいずれもキレイに出ている。なお,今回はライン部とGロゴの色を揃えたが,別の色を指定することもできる
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2.割り当て。サウンド関連以外に,「Discord」や「Open Broadcaster Software」の操作や,Windowsシステム操作も割り当てられる
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3.音響。「音量」はヘッドフォン出力音量,「マイク」はマイク入力音量の調整用で,「測音」はしゃべったときに自分の声をモニタリングするのに使うサイドトーン音量だ。このスライダーを一番下まで下げるとサイドトーンは無効になる
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「サラウンドサウンドを有効にする」のチェックを入れるとDTS Headphone:X 2.0が有効になる。「部屋名」のプルダウンメニューから選択できる選択肢は「ENTERTAINMENT」「GAMING」「SPORTS」の3つ。右ペインにはバーチャルサラウンドスピーカーの音量調整機能とサラウンド効果チェックボタンがある
4.イコライザ。「ムード」のプルダウンがいわゆるプリセット選択項目で,「デフォルト」だと右ペインにはヘッドセットの画像があるだけだが,プリセットを選ぶと右ペインが10バンドイコライザに切り替わり,どのような設定になってるかを確認できる。ただし,ユーザーがプリセットを微調整することはできず,調整したい場合は新規でイコライザを作成しなければならない
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実際に「ムード」のプルダウンメニューを開いたところ(左)。「新しいイコライザーを追加」からは新規にプリセットを作成できるが,デフォルト名「NEW EQUALIZER」で追加となる新規プリセットは標準だといわゆる低音と高音を強調/減衰させるシンプルな2バンドイコライザだ(中央)。これを10バンドへ切り換えるには「詳細EQを有効化」にチェックを入れる必要がある(右)
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メインメニュー右上の歯車アイコンからはシステム情報などの確認や,デフォルトのライト効果などを指定しておける。ざっと確認したところ,G933sのバッテリーが100%の状態で左右2か所ずつのLEDを点灯させた場合に駆動時間の目安表示は最大6時間,消灯した場合は最大13時間だった
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Pro-G 50mmドライバー搭載で余裕のある音になったG933sとG633s。イヤーパッドが異なるため,音質傾向は若干異なる


 筆者のヘッドセットレビューでは,基本的に以下のテストを行っている。

  1. ヘッドフォン出力の周波数特性計測と試聴
  2. ヘッドフォン出力の遅延計測(※USBおよびワイヤレス対応モデルのみ)
  3. マイク入力の周波数特性および位相計測と試聴

 このうち1.および2.では基本的に「4Gamerのヘッドセットレビューなどにおけるヘッドフォン出力テスト方法」準拠,3.では「4Gamerのヘッドセットレビューなどにおけるマイクテスト方法」だ。

 さて,まずは1.のヘッドフォン出力計測からだが,ここではとくに断りのない限り,G HUB上のイコライザ設定はデフォルト,サラウンド(=DTS Headphone:X 2.0)は無効となる。
 アナログ接続時につなぐ先は4GamerのリファレンスとなるCreative Technology製サウンドカード「Sound Blaster ZxR」。前述のとおりG933sとG633s付属のアナログケーブルは両端が4極3.5mm端子なので,接続にあたっては4極×1−3極3.5mm×2変換アダプターを噛ませた。

ヘッドフォン出力テスト用のリファレンス波形
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 本稿で示すテスト結果において,波形スクリーンショットの右に示した画像は,それぞれ「得られた周波数特性の波形がリファレンスとどれくらい異なるか」を見るものとなる。
 これは,Waves Audio製アナライザ「PAZ Analyzer」で計測したグラフを基に4Gamer独自ツールを使ってリファレンスと測定結果の差分を取った結果だ。リファレンスに近ければ近いほど黄緑になり,グラフ縦軸上側へブレる場合は程度の少ない順に黄,橙,赤,下側へブレる場合は同様に水,青,紺と色分けするようにしてある。

 差分画像の最上段にある色分けは左から順に重低域(60Hz未満,紺),低域(60〜150Hzあたり,青),中低域(150〜700Hzあたり,水),中域(700Hz〜1.4kHzあたり,緑)中高域(1.4〜4kHzあたり,黄),高域(4〜8kHzあたり,橙),超高域(8kHzより上,赤)を示す。

 というわけでまずはG933sから見ていこう。下に示したのはワイヤレス接続時の出力周波数特性で,低域は80Hz付近,高域は5〜7kHz付近を頂点としたドンシャリ傾向になっている。700〜3kHzくらいが広い谷で,プレゼンスを抑えつつより高い高域がしっかり再生できている印象だ。
 低域は80Hz以下がなだからに下がり,一方,高域は15kHz以上くらいから上の超高域で大きな落ち込みが生じているのも見てとれよう。

G933s,ワイヤレス接続時のヘッドフォン出力周波数特性
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 次にアナログワイヤード(以下,アナログ)接続時の結果だが,簡単に言えばワイヤレス接続時とよく似ている。低域と高域の頂点の位置もほぼ変わらない。ただし,80Hz以下の落ち込みのカーブはワイヤレス接続時と比べて若干緩やかなので,重低域再生特性は若干良好と言えそうだ。
 ただ,30Hz以下だとワイヤレス接続のほうが下がり方はゆるやかなので,超重低域はアナログのほうが若干弱いとも考えられる。

G933s,アナログ接続時のヘッドフォン出力周波数特性
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G933s,ワイヤレス接続とアナログ接続の周波数特性差分
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 右に示したのは,G933sのワイヤレス接続に対してアナログ接続がどれくらい乖離しているかをチェックした差分データだが,ご覧のとおり,違いはわずかでしかない。
 筆者はSound Blaster ZxRの搭載するヘッドフォンアンプを「2019年でも通用する,優秀なコンポーネント」だと考えているが,それと遜色ない周波数特性をG933sはワイヤレス接続時にも実現できているわけである。

 続いてはG633sだ。スピーカードライバーもエンクロージャも同じなので,ほぼ同じかと考えていたのだが,USB接続時の周波数特性は下に示したとおり,G933sとけっこう異なるものになった。
 G933sと比べて低域の山は50Hzくらいに下がり,5〜7kHzの高域の山がより高くなっている。また,G933sで谷として認識できた部分は,「750Hz〜3kHzあたりが若干低い」レベルになっている。ここから読み取れるのは,合皮と比べて相対的に気密性の低いスポーツメッシュを採用したG633sでは,750Hz以下の周波数帯で音抜けが生じ,低域が相対的に低くなっていることだ。

G633s,USB接続時のヘッドフォン出力周波数特性
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 下に示したのはG633sのアナログ接続時におけるテスト結果だ。USB接続と比べると,100Hz付近から下がさらに落ち込むのと,5〜7kHzの高域の山より低い90Hz〜3kHz付近はほぼフラットに近い形状で,USB接続時だと750Hz〜3kHzが若干低かったのが,それすらなくなり,90Hz〜3kHzに至ってはほぼフラットに近くなっている。
 高域だと15kHz以上で落ち込むのはG933sと共通である。

G633s,アナログ接続時の出力周波数特性
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G633s,USB接続とアナログ接続の周波数特性差分
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 G933sと同じく,USB接続に対してアナログ接続がどれくらい乖離したかの差分データを右に示してみるが,中低域の80Hz〜120Hzにおいてアナログ接続はUSB接続より弱く,一方で120Hz〜6kHzくらいは全体的にアナログ接続時のほうが高く,さらにその上ではまた弱くなっているのが見てとれる。

 以上を踏まえて試聴である。

 G933sのワイヤレス接続は,周波数特性どおりに低域がしっかりと豊かで,同時にプレゼンス(※)でなく高域を強調しているため耳に痛くない。
 輪郭はメリハリがあってカリッとした軽いドンシャリ傾向なので,あまりボリュームを上げなくても音のディテールを聴き取れる印象だ。

※1.4〜4kHz程度の中高域。プレゼンス(Presence)という言葉のとおり,音の存在感を左右する帯域であり,ここの強さが適切だと,ぱりっとした,心地よい音に聞こえる。逆に強すぎたり弱すぎたりすると,とたんに不快になるので,この部分の調整はメーカーの腕の見せどころとなる。

 特筆すべきは――周波数特性のグラフでは分からないのだが――従来製品であるG933やG633と比べて音に余裕が感じられるところである。Pro-G 50mmドライバーの恩恵だと言っていいと思うが,高域は非常にスムーズに出ており,シンバルやハイハットなどといった「プレゼンスから高域を占める成分」に歪みが感じられない。
 また,ベースなどの低音楽器もいっぱいいっぱい感がなく,こちらも余裕で鳴らしている印象だ。

DTSスーパーステレオモードのプルダウンメニュー
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 なお,ここまであえて触れなかったが,G933とG633のDTS Headphone:Xと同様に,G933s(とG633s)のDTS Headphone:X 2.0には,2chステレオに対して適用するオーディオプロセッサ(≒サウンドエフェクト)としての「DTSスーパーステレオモード」がある。プルダウンメニューから選べる選択肢は「フロント」「ワイド」「トラディショナル」の3つだ。

 実のところ,筆者はDTSスーパーステレオモードをG933&G633時代からあまり評価していないのだが,なら今回はどうかというと,やはりイマイチだ。

  • フロント:低域から中域が不必要に持ち上がり,高域に被って高域がロールオフして,音場が狭くなった印象になる
  • ワイド:フロントと比べると音場は広くなり,中域の盛り上がりは大人しくなるが,低域が依然として強すぎる
  • トラディショナル:低域の強調は最も抑えられており,3つの中では一番マシ

といった感じなのだが,トラディショナルを選んだ状態から「OFF」に戻すと,本来聞こえて欲しい音で楽曲が聞こえるようになりホッとするくらいなので,今回もDTSスーパーステレオモードは無用の長物と言わざるを得ないだろう。よって,G633sでは評価を行わない。

 最後にアナログ接続だが,聴感上はグラフの差分以上に違いがあった。60Hzから250Hzにかけてがわずかながら弱いためか,ベース楽器の重心はワイヤレス接続よりも若干高くなる。人によっては,これくらいの低域のほうが好ましいと思う人もいるだろう。

G633s。DTSスーパーステレオモードを有効化するべきでないのもG933sと同じだ
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 次にG633sだ。結論から先に言うと,プレゼンスから高域の聞こえ方はG933sと同じで,音の鳴り方というか聞こえ方に余裕が感じられるのもG933sと同じながら,イヤーパッド素材の違いからG933sと比べると低音が抜けた感じを受ける。
 ただ,これは「だから悪い」という話ではなく,人によってはG633sのほうがバランスよく感じられる可能性がある。というのも,G933sだと低域が強いドンシャリ傾向なのに対し,G633sは下が重低域までフラットで,高域はスムーズという,若干の低弱高強気味の音質傾向になっているからだ。

 低域から重低域までしっかり聴き取れる一方で低域が強すぎないため,相対的に中域が強く,結果,中域の解像度が増して聞こえる。良し悪しではなく,G933sとG633sの音質傾向は人によって好みが分かれる感じなのだ。個人的には,2chステレオでFPSやTPSをプレイする人により向いているのはG633sのほうだと思うが,筆者とまったく違う意見を持つ人もいるだろう。
 そう考えると,「ワイヤレスは合皮,USBはスポーツメッシュ」と,イヤーパッドを決め打ったLogitech G/Logicool Gの判断はやはりミスだったと言わざるを得ない。完成度が高いG933sとG633sだからこそ,イヤーパッドはユーザーの好みで選ばせてほしかった。

 なお,アナログ接続だと,6kHz以上がUSB接続と比べてやや弱いためか,音抜けが若干悪くなった印象を受ける。120Hz以下が弱いため,低域もわずかに弱く感じるが,周波数全体として捉えると大きく音質傾向は変わらない。

 続いてはサラウンドの効果テストだ。テストに用いるのは,最近リファレンスとして用意している「Fallout 4」と「Project CARS 2」,「MONSTER HUNTER: WORLD」。いずれもゲーム側でサラウンド出力を有効化したうえで,G HUBからDTS Headphone:X 2.0を有効化。部屋名というプルダウンメニューから選んだプリセットはGAMINGとなる。

筆者がG933sで試したイコライザ設定。こんな感じで「250Hzから32Hzに向けて徐々に落ちていく」設定であれば迫力を失うことなしに強すぎる重低域を抑えることができた。低域が強すぎると感じた場合は試してほしいと思う
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 まずはFallout 4だが,G933sだと重低域の鳴りが予想以上にすごく大きく,ゲーム側で再生する低周波ノイズまで拾える一方,中低域が強すぎて若干濁った感じになり,キャラクターの音声もやや引っ込んで聞こえる。イコライザを使って低域を削ったほうがいいかもしれない。

 定位感は素晴らしく,ヘリコプターの前でぐるぐる回ってみて音のデッドポイントがないのはもちろん,映像で右前方30度くらいに描かれたローターの効果音も30度付近から,しかもかなり遠いところで聞こえる。
 DTS Headphone:X 2.0がほかのバーチャルサラウンド技術と比べて明らかに優れると言えるのはこの「前方定位が眼前より遠いところにくる」点で,結果として,仮想フロントスピーカーとリアスピーカーの中央に近いところにリスナーがいる仮想リスニングルームを構成できるのだ。多くのサラウンドヘッドフォン技術だと,もっとフロント寄りのところでリスニングポイントが構成されてしまうことが多いのだが,G933sはそうではないのである。
 「定位を把握しやすくするためにプレゼンス帯域を上げる」といった(小手先の)対応をしていないので,聞こえ方はマイルドだ。長時間のゲームプレイにも堪えられると思う。

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MOBAプリセット。ご覧のとおり「低域を削ってプレゼンスを足している」ため,全体として元の音質傾向より低弱高強にできる。なので,低域が強すぎとか高域がスムーズすぎるとかいった場合はまずこちらを試してみるといい
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あるいはG933sのところで紹介したお勧め設定に近いイコライザ設定を作るのもアリだろう。250Hzと32Hzを,G933sと比べると多少上げているが,基本的には同じ考えだ
 G633sだと中域が持ち上がってくるので,G933sと比べてキャラクターのセリフはより聞き取りやすい。また,G933sほどの強烈な重低域も再生されないので,全体としても音は聞きとりやすい印象だ。
 ただ,それでも少し低域は強めだ。G933sもそうだが,たとえばイコライザのプリセットで「MOBA」を選ぶと,よりすっきりした音になっていいかもしれない。

 サラウンド感そのものはG933sと同じと断言できるレベル。G933sと同様,G633sも聞き疲れしない。

 続いてはProject CARS 2である。
 G933sだとやはり重低域の効果音が強めな印象で,エンジン音の重低音部分がよく聞こえる。ただ,これくらい重低域が前に出ると,一般にはサラウンド定位も悪くなりそうなものだが,そうはならず,やはり前方定位が眼前よりずっと前になり,敵車が左右にドリフトしているのも音で追える。たとえば,眼前で左から右に移動する敵車を左から追い抜くとき,その音源移動を側方までしっかり確認できるのだ。
 一方,後方定位は若干控えめで,後ろからの音よりは前方の音のほうが捉えやすい。全体の音の把握はしやすく,小石が飛んだ音や縁石に乗り上げた音まで確認できる。

Project CARS 2では,G933s,G633sとも「こんなに低域が強いのに,ボリュームを上げても耳が痛くない」という不思議な体験ができる
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 G633sの場合,G933sより低域は弱めながらも十分すぎるほどだが,中域以上が強めに聞こえるため,バランスはよい。
 後方定位はG933sより把握しやすいが,これはG933sと比べて,より高い帯域に対して低域の被る量が少ないからだろう。音源の移動などは抜群に把握しやすかった。

 最後にMONSTER HUNTER: WORLDだ。G933sは本作をプレイしたときが一番バランス良く感じられた。マイルドな音響特性なので耳が疲れることなく,細かな音まで拾える。また,DTS Headphone:X 2.0らしくプレイヤーキャラクターの足音がかなり前方に定位するのを確認できた。
 音の回り方も秀逸で,音源の前でぐるぐる回っても距離感が変わることはない。つまり前方定位の距離が後方定位の距離とほぼ同じだということになる。

 対するG633sだと低域が抑えられるため,G933sよりも全体の音を把握しやすくなる。ただ,Fallout 4やProject CARS 2のような極端な違いはなかった。


遅延は文句なし。ワイヤレスのほうが速いのはLogitech G/Logicool Gらしい!?


 続いてはヘッドフォン出力時の遅延検証だ。リファレンスとして用いるのは「Sound Blaster ZxRにG933sをアナログ接続した状態」で,これと比較した相対的な遅延状況をチェックすることになる。テスト対象は2chステレオ出力時とDTS Headphone:X 2.0有効時の2パターンで,用いるAPIはDirectSoundとなる。

 結果は表2のとおりで,まずSound Blaster ZxR+G933sというリファレンスに対して,G933sのワイヤレス接続およびG633sのUSBワイヤード接続のほうが速い。G933sは2chステレオ出力時とDTS Headphone:X 2.0出力時でいずれも45msと,ざっくり3フレーム弱速いというのは衝撃的だ。G633sはG933sほどではないものの,アナログ接続時比で2フレーム弱速いので,これも十分だろう。
 最近のLogitech G/Logicool Gは,マウスなどで「LIGHTSPEED」をアピールするなど,ワイヤレス技術に絶対の自信を持っているように見えるが,G933sの速度性能も実にすばらしい。「ワイヤレスは遅延が……」とは軽々しく言えなくなってきた感がある。

※DTS:DTS Headphone:X 2.0有効時
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 なお,1つだけ注意してほしいのは,DTS Headphone:X 2.0はその仕様上,ソースが2chの場合はステレオ・トゥ・サラウンド的な処理を行わないため,「サラウンドソース処理の遅延」を計測したものではないということだ。なので,サラウンドソースの処理では遅延が若干大きくなる可能性がある。
 ただ,体感上,サラウンドソースを再生しても遅延が大きくなった印象はないので,プレイ感に影響するほどの遅延は生じていないと考えていいように思う。


マイクは極端に低域をカットした特性。ノイズキャンセリングの詰めが甘い印象を受ける


 テストの最後はマイク入力である。
 G HUB状の「ノイズ除去」は有効化しても無効化しても変わった感じがしないので,有効時の結果は差分だけ掲載するとお断りして,G933sのワイヤレス接続時から順にテスト結果を見ていこう。

 下に示したのが結果だが,2kHz〜6kHz部分が持ち上がりつつ,125Hz以下の低域と7kHz以上の高域がスパッとカットされた周波数特性になっている。
 4Gamerで独自に用意した差分取得ツールは入力信号が−80dB以下になることを想定していないため,差分データは一部おかしなことになっているが,ともあれ,高域のほうはUSBアダプターを介した接続であるがゆえの帯域制限と考えられる。要するに,サンプリングレートは16kHzくらいということである(※)。
 低域はマイクの特性なのかフィルタリングの結果なのかは不明ながら,要は低周波をカットすることで聞きとりやすくしているのだと思われる。位相は完璧だ。

G933s,ワイヤレス接続時のマイク入力特性(ノイズ除去無効)
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※「あるオーディオ波形を正確にサンプリング(=標本化,データ化)するためには,当該波形の周波数成分よりも2倍以上高い周波数を用いる必要がある」という「サンプリング定理」に基づいた解釈。

G933s,ワイヤレス接続時のマイク入力特性(ノイズ除去無効時と有効時の差分)
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 右に示したのがノイズ除去無効時と有効時の差分データだ。ここでは無効時に対して有効時にどれだけの乖離があるかを見たものになるが,有効化によって,50Hz〜7kHzあたりが全体的に数dB大きくなった。一般的にはノイズリダクションを適用すると小さくなるはずなのだが,その理由は分からない。

 続いて下に示したのはアナログ接続時のテスト結果だ。USBアダプターを経由することによる帯域制限の影響を受けないため,7kHzより高い周波数帯域も落ち込むことなく集音できる。
 気になったのは,低周波の特性は500Hzくらいから下でゆるやかに60Hzくらいまで下がっていく形状になっていて,ワイヤレス接続時とは形状が異なること。つまり,ワイヤレス接続時は500Hz以下をむしろ強調する調整になっているということになる。
 位相は問題ないので,モノラルマイクと断言してしまっていい。

G933s,アナログ接続時のマイク入力特性
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 入力した音を聞いてみると,ワイヤレス接続時はノイズ除去が無効な状態でも常時ノイズキャンセリング機能が有効になっている印象がある。小声でしゃべると水の中で音を聞いたときのような音質になってしまうが,マイク入力レベルを上げるか,大きめの声を出すかすれば対策可能だ。
 なお,低域をばっさり切っているとはいえ,必要な帯域は確保できているので,上が7kHzくらいまでしか有効になっていない割にはざらざらしておらず,何を言ってるか伝わりやすくなっている。

 一方のアナログ接続はワイヤレス接続と比べて声の「ボディ」となる中低域が大幅に弱まりつつも超高周波まで集音するため,もっと線が細い感じの音になる。
 ただ,ワイヤレス接続だと常時有効なノイズキャンセリングがアナログ接続時には入らないため,音はクリアだ。また,単一指向性マイクと低域カットの合わせ技も効いているため,ノイズも少ない。「何を言っているのか伝わりづらい」という状況にはまず陥らないだろう。

 続いてはG633sのUSB接続におけるマイク入力特性を見てみるが,G933sと異なり,700Hzくらいから15kHzくらいまでが持ち上がった波形になっている。USBによる帯域制限の影響は受けているものの,サンプリングレートがワイヤレス接続と比べて高いのは明らかだ。16kHz以上でスパッと落ちているので,32kHzだろう。
 700Hz以下は相対的にかなり低いが,「落ち込む」のは140Hzくらいから下だ。位相は完璧である。

G633s,USB接続時のマイク入力特性(ノイズ除去無効)
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G633s,USB接続時のマイク入力特性(ノイズ除去無効時と有効時の差分)
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 ノイズ除去無効時に対して有効時にどれだけの乖離があるかは右の画像にまとめたが,ここでは700Hz〜850Hzの付近に違いが生じている。なので,ノイズ除去を有効化すると,900Hzくらいに低域をカットするハイパスフィルタがかかっているのではないかと思う。

 最後はアナログ接続時のマイク入力特性だが,20Hzくらいから2kHzくらいまで緩やかに大きくなり,6.5kHzくらいから上で落ち込み始めるという,G933sとは異なる結果になった。ハードウェアの仕様からして,マイク部品が異なっているとはあまり考えにくいのだが,ならなぜフィルタリング設定が異なるかのような結果になっているのかと問われると,分からないと回答せざるを得ない。
 位相はここでも完璧だった。

G633s,アナログUSB接続時のマイク入力特性
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筆者の環境だけかもしれないが,G633sでUSBとアナログケーブルを同時に同じPCと接続しておくとマイク入力した音に大きめのノイズが乗った。異なるマシンとつないでおけば問題ないようだ
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 録音した音を聞いてみてすぐに分かるのは,G633sでもUSB接続時のノイズキャンセリング機能はG HUB側ノイズ除去機能と無関係に常時有効になることだ。小声だとやはり水の中で音を聞いたときのような音質になってしまうので,G933sと同様,マイク入力レベルを上げるか,大きめの声で話すかの対策が必要と感じる。

 総じてG933sと比べてと比較してサンプリングレートが高いため,G933sではより高周波を集音できる。Discordなど,高いサンプリングレートをサポートする環境だとG633sのほうが有利だろう。


従来製品と比べて「音の違い」が顕著なG933s&G633s。よりゲーム特化型なのはG633sか


製品ボックス
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 「G933とG633から,ずいぶんと音を変えてきたな」というのが,テストを終えた筆者の胸に去来した,最初の感想である。Pro-G 50mmという新開発のスピーカードライバーを搭載した“だけ”のマイナーチェンジだと思っていたら,良くも悪くもプレゼンスの強かったG933&G633と比べて,G933sとG633sは音のキャラクターがまったく異なるのだ。他社製ヘッドセットのハイエンドモデルのどれとも似ていない,まったく異なる路線に舵を切ってきた印象がある。

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 低域は人によっては出すぎだと思う可能性もあり,その場合は筆者がお勧めしたように少し下げるべきだが,ともあれ,G933sとG633sでは長時間プレイしたとき耳にかかるストレスがより弱く,2chステレオ再生を好むコアゲーマーにとっては音源定位感が非常によく,しかもDTS Headphone:X 2.0の効果で現行世代のバーチャルサラウンド技術としては屈指の360度音源定位を把握できる。これは見事だ。
 マイクはノイズキャンセリング周りに改善の余地があるものの,「何を言っているかボイスチャット相手に伝わる」という面では合格点を与えられるため,さしたるマイナスにはならないだろう。

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 イヤーパッドがもたらす音質傾向の違いが予想以上に大きく,評価の段でも触れたように,エンドユーザーが合皮とスポーツメッシュのイヤーパッドを交換できないのがとにかく残念だが,少なくとも工場出荷時設定でよりゲーム用途向けなのはG633sだと筆者は考えている。G933sはもうホームオーディオの音だ。
 好みのイヤーパッドを保守部品として購入できるようになれば,G933sでもG633sに近い音質傾向が得られるため,ゲーマーにとって選択の幅が広がり,よりよいと思うのだが……。

 発売日時点の実勢価格はG933sが2万900〜2万3200円程度,G633sが1万7400〜1万9400円程度(※いずれも2019年2月26日現在)。両製品とも,完成度の高い高品質なヘッドセットなのは間違いないので,単なるマイナーチェンジと即断せず,機会があればぜひ試してほしい。

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