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[E3 2006#081]新しい方向性を打ち出したMMシリーズ最新作「Dark Messiah of Might&Magic」
もともと,一人称視点でスムースに(疑似)3D空間を移動するインタフェースが特徴のMMシリーズだったが,この「Dark Messiah」は,RPGではなく(シューティングではないが,つまるところ)FPSで,スピーディな動きで,ジャンプやダック(かがみ姿勢)もこなすという。Ubisoftの担当者が操作するデモプレイが,いかにも魅力的だったのだ。
それもそのはずで,本作の最大の特徴は,やはりSourceエンジンの採用だろう。これは「Half-Life 2」のために開発されたグラフィックスエンジンで,ハイレベルな画面表示を可能にするとともに,リアルなキャラクター表現,物理エンジン,ネットコード,AIなどもサポートする総合的なミドルウェア。本作はその機能をフルに発揮し,そんじょそこらのFPSにも負けないリアルな世界を作り上げているのである。Sourceエンジンでファンタジーを作ってしまうかあ,という軽い驚きさえある。
何人もの敵が襲いかかってくるが,そいつらを剣で倒していくだけではなく,例えば,棚を支える柱をへし折って,そこに載った重い荷物を敵の頭上に降らせて,何人もまとめて倒したり,あるいは魔法を使って相手を谷底に突き落としたりと,さまざまな方法があるのが分かる。魔法の中には,まず相手を手前に引きつけ,勢いよく遠くへ吹き飛ばすというものがあり,その動きはHL2のグラビティガンそっくり。見ていて大変爽快である。
このように,一つの問題にさまざまな解法が与えられており,それを見つけるというパズル的な面白さも感じられた。もちろん,こうしたパズルには物理エンジンを使ったものが多く,Sourceのパワーは遺憾なく発揮されている。
「邪悪な力」と呼ばれることもある魔法の中には,相手を小さくして踏み潰すというものもあり,なんとなく「Duke Nukem 3D」を思い出させて微苦笑だ。魔法には12のレベルが,また武器は30種類以上が用意されているとのこと。
ちなみに,RPG版のMMシリーズの特徴の一つとして,広大なマップを自由に行き来できるという点が挙げられる。しかし,FPSっぽい本作で,それはやはり無理な話だろう。デモプレイに限って言えば,マップはリニアな一本道という印象だった。
やがて,谷の上にたどり着くと,そこには巨大なモンスターが。矢を射ても,魔法を食らわせてもなかなか倒れず,大きな岩の隙間に隠れれば,そこを覗き込んで主人公をつかみ出して放り投げ,ダメージを与えてくる。こんなビッグなヤツを相手に何をどうすればいいのか? と思いつつ上を見上げると,丸太がまとめて縛ってあり,そこから一本のロープが天井に伸びている。ははあ……,という具合にゲームを進めていくのだろう。
こうした隠された解法がどれくらい,またどの程度合理的に備えてあるのかがゲームの評価に大きく関わってきそうである。
このようにアクション性を強く前面に押し出した本作だが,そのルーツでもあるRPGの要素も忘れてはいない。経験値を積むことで,新しい魔法を覚えたり,攻撃力を高めたりできるのだ。もっとも,マップが一本道では登場する敵の数が限られ,レベル向上の限界も決まってくる。そのため,成長は,例えば「刀専門」「魔法専門」といった方向を決めて成長させていくことになるようだ。
FPS方向に進むことで“自由度”は多少犠牲になるが,べつに自由度が低ければ悪いというものでもなく,かえって,いままでファンタジーやRPGが苦手だったアクションゲーム好きにもアピールする内容になっていく気がする。なにより,RPGシリーズから大きく向上したグラフィックスが素晴らしく,このクオリティでドラゴンなんか出てきた日にゃあんた,という雰囲気だ。新しい方向へ進化を始めた息の長いMMシリーズ最新作,「Dark Messiah of Might & Magic」。発売は9月が予定されている。(松本隆一)
- 関連タイトル:
Dark Messiah of Might and Magic 日本語マニュアル付英語版
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