［GC 2005＃01］ピーター・ジャクソン「King Kong」プレイアブル展示！

ラプターを投げ払ったり，ティラノサウルスとの殴る噛み付くの死闘を演じたりと，キング・コングのモードは非常に楽しい

　映画"ロード・オブ・ザ・リング"シリーズで，新世代映画監督の筆頭へと上り詰めたピーター・ジャクソン（Peter Jackson）氏。その彼の最新作が，12月14日に全世界で同時公開予定の映画「Peter Jackson's King Kong」である。
　当時最先端の特撮技術だったミニチュアやモデル・アニメーションを多用して制作された1933年作品のリメイクだが，すでに公開されている劇場用トレイラームービーでもお分かりのように，今度のキング・コングは3DCGで描かれており，恐竜と戦うシーンもあるなど，各所で現代風に一新されている。
　そのジャクソン監督が自ら深く関与したライセンスゲームが，フランスのUbisoftによって開発されている。制作の陣頭指揮を執るのは，同社の看板ソフトである"Rayman"シリーズを生み出したMichel Ancel（ミッシェル・アンセル）氏である。氏は，ジャクソン監督の居城であるニュージーランドのWeta Digitalに何度も足を運んでは，門外不出のアセットに身を染めることで，「映画のスケールに負けないだけの作品になっている」と自信を覗かせる。
　またアンセル氏に言わせると，ジャクソン監督は相当なゲーム好きらしい。そもそもUbisoftの「Beyond Good and Evil」（これもアンセル氏の作品）に感銘を受けたことからコラボレーションが決まったそうで，その後も二人は本作について何度も議論を重ねているのだという。

　そのゲーム版Peter Jackson's King Kongが，GC 2005のビジネスデイ（8月17日）にアンセル氏自身によって公開され，またプレイステーション2やXbox版ながら，プレイアブルな状態で初公開されていた。
　このゲームのために開発されたJadeエンジンが描く美しいジャングルや都会で，プレイヤーは主人公であるジャック・ドリスコルとなって，孤島からニューヨークへの生還を目指し，冒険を楽しむことになる。

　映画公開前ということもありストーリーの詳細については語られていないが，劇場用トレイラーではNaomi Watts（ナオミ・ワッツ）演じるヒロインのアン・ダロウは大恐慌時代のニューヨークに生きる若い女性として描かれており，映画業界での成功に躍起になっているジャック・ブラックと出会って，南海の島へと撮影旅行に繰り出す。主人公のジャック・ドリスコルはしがない脚本家という設定で，彼らの船が謎の島に座礁してしまうのだ。
　本作は大別して二つのゲームプレイに分かれており，一つはジャック・ドリスコルとなるもの。第一人称カメラ視点で，襲いかかってくるラプターや巨大昆虫と戦うのだ。そしてもう一つは，キング・コングを操るもの。こちらは第三人称の視点で，ティラノサウルスなどと死闘を演じることになる。
　ただ，ジャック・ドリスコルとしてのゲームプレイにしても，FPSというよりはアドベンチャーゲームの性格が強く，例えばインベントリの要素がないため，武器を溜め込むことができない。ジャクソン氏自身が，アンモがそこらじゅうに落ちているというゲーム的な不自然さを嫌っているらしく，本作では銃弾を使い切れば，木の槍などで戦うことも必要となる。
　第一人称視点のシーンで特筆できるのが周囲の仲間との連携プレイで，お互いに助け合うように進んでいくのは，Beyond Good and Evilの影響が感じられる。デモではアンやプレイヤーを含めて4人の仲間達がラプターの大群に襲われていたが，負傷した仲間の一人を後方で引きずっていったり，余ったライフルをプレイヤーに投げてよこすような場面も見られた。

プレスカンファレンスで，King Kongのデモを行うUbisoftのミッシェル・アンセル氏。アンセル氏は，同社の本丸Montpellierオフィスで，Raymanの開発部隊を率いていた

　今回筆者が実際にプレイしてみたのは，プレイヤーがキング・コングとなって，逃げ出したアンの前に立ちはだかるティラノサウルスとの死闘を演じる場面だ。プレイステーション2版でプレイしてみたが，左のアナログスティックで移動し，右の四つのボタンで攻撃やジャンプと，操作は至って簡単にまとめられていた。
　それでも，ティラノサウルスを地面に叩きつけたり，周囲のオブジェクトを利用して移動したり，ティラノサウルスの両あごが引き裂けるほど力を入れたりといった行動で，多彩なアニメーションを楽しめた。2度目のトライで難なくミッション一つをクリアできたので，難度はかなり低めに設定され，その分爽快感を演出している印象を受けた。
　映画のキング・コングのアニメーションは，ロード・オブ・ザ・リングではゴラムのモーションキャプチャのリファランスを提供したAndy Serkis（アンディ・サーキス）が行っているらしく，もちろんそのデータはゲームにも利用されている。そのほか，ワッツら役者陣の音声やキャラクターモデルをゲームに利用することで，映画そのままの雰囲気に統一されているようだ。
　もちろん，PCゲーム版や企画中のXbox 360版では，高解像度のテクスチャがWeta Digitalから提供されることになっており，究極のライセンス作品となりそうな気配もある。

　ストーリー上，アンを追ってキング・コングがニューヨークに上陸するのは間違いなく，トレイラーでも一瞬だけタイムズスクウェアあたりで大暴れするコングの姿を見られる。ゲームでも同じような行動ができるのは十分に予想できることだ。
　ゲーム版Peter Jackson's King Kongは，映画の劇場公開よりも2週間ほど早い11月末に北米でリリースされる予定である。（奥谷海人）