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[E3 2005#169]「EverQuest」の元開発者達が贈るMMORPG「Vanguard:Saga of Heroes」
その理由は,まずこのゲームを開発しているSigil Game Online社が,Brad McQuaid(ブラッド・マッケイド)氏やJeff Butler(ジェフ・バトラー)氏ら,「EverQuest」の生みの親であるVerant Interactive社の元中核メンバー達の新しいチームであること。そして,彼らがUnreal Engine 3を使用することで,広大でシームレスな美しい世界を作り出していることだ。
今回のE3会場では,MicrosoftブースだけでなくATI社のブースでも公開されており,もはや"秘密プロジェクト"でなくなっているのが分かる。
ただし,紹介されていたマップは暗いダンジョンとプレイヤータウンであり,昨年に見せてもらった広大な都市ほどインパクトのあるものではなかったのは残念。とはいえ,片側だけで何十砲ものキャノンを装備している巨大な帆船が戦っているような場面も公開されており,大作の片鱗くらいは感じ取ることができた。
今回のデモで公開されていた新要素は,キャラクターメイキング,クラフティング,そしてアドベンチャー(戦闘)の三つ。順を追って紹介していこう。
■キャラクターメイキング
このほかプレイヤーが選択できる種族としては,トラ人間のクラセシャ(Kurashesha),ドワーフ,ダークエルフ,ウッドエルフ,ノーム,ゴブリン,ハーフエルフ,ハーフジャイアント,ハーフリング,オーク,そして実態不明のヴァルネイン(Valnane)と,初期段階で計18種族あり,ほかのMMORPGと比べてもかなり選択肢が多くなっている。とくに,ゴブリンが選択種族の一つに入っているのがユニークだ。
キャラクターメイキングでは,ファーストネームとファミリーネーム,性別,そして容姿を選んでキャラクターを作成する。ここまでは一般的だが,Vanguardでユニークなのは,キャラクタークラスが,"アドベンチャリング" "クラフティング",そして"ディプロマシー"(外交)の3グループあり,それぞれ一つずつ選択しなければならないということ。つまりプレイヤーは,ゲーム開始時にウォリアーやメージなど戦闘に関わるクラスを選択するだけでなく,アーキテクトやプロスペクター(鉱山技師),グリーナー(収集業者)などのクラフティング用クラスと,ディプロマット(外交官)やポリティシャン(政治家)といった外交用クラスの三つを選ぶ必要があるわけだ。
それぞれのクラスにある選択肢の数は判明しなかったが,キャラクター種族と職業の組み合わせが,実に多岐にわたるであろうことは間違いない。面白いのは,ちょうど「大航海時代 Online」のように,レベルアップは三つの分野で別々に行われるようになっていること。戦闘に一切参加しなくても,クラフティングやディプロマシーで大成することも可能なのだ。
■クラフティング
しかし,Vanguardにおけるその概念は,少し複雑だ。プレイヤーがクラフトを行うときは,金床や木工具,窯の前に行って作業を始める。作業は3段階に分かれていて,まずは必要な資源を集めて投与する"アセンブリ"(組み立て)のステージ。クラフティング専用のインタフェースを引き出し,組み立てを行うことになる。
次のステージが"フィニッシング"(仕上げ)で,これもクラフティングで重要な作業だ。デモでは剣の作成を実演していたが,鉱物に合った温度に調節するための気配りを,まるでフィールドでモンスターと戦うようなやり取りで表現しているのだ。
そして最後の"リファイニング"(精製)ステージで,出来たアイテムに名前を付けるといった作業を行う。
興味深いのは,この作業の間中,クラフティング専用インタフェース下部にある,等級パラメータが少しずつ動いていたことだ。そのレベルはD級からA級まで4段階あり,作業をするごとに上昇していく。
自分が制作しているアイテムが,その時点でどのような品質になっているのかを示すわけだが,もし途中で高級アイテムにならないと分かった場合,プレイヤーは諦めて次の作業に移りたいと考えないだろうか? その質問にデモ担当者は,「途中で止めた場合は資源が返ってくるかどうかを含め,クラフティングのバランス調整はβ段階で行っていくつもり」だと答えてくれた。
ほかのMMORPGよりはインタラクティブになったクラフティングは楽しみな要素だけに,簡潔で使いやすいものになるよう期待したい。
■アドベンチャー
本作では,これまた非常にユニークな仕様が考案されている。まず一つめが"パーセプション"(予知)で,プレイヤーはスキルを磨くことで,戦闘で事前に起こることを予知できるというものだ。
戦闘では,プレイヤーキャラクターは特定の"スタンス"を取ることになっていて,大まかには"攻撃"と"防御"に分かれる。この防御のスタンスを取っている場合には,例えばメージやソーサラーが,相手キャラクターが次にどんな魔法を唱えるのか予知し,それに対抗するための魔法を発動したり,スカウトのキャラクターが前方にあるトラップや角の向こうに潜む敵を察知したり……ということが可能になる。
"MMORPG"である本作で,どのように処理されているのかイマイチ理解できなかったが,戦闘は数秒間ずつに区切られたターン制になっているようだ。ハイレベルになれば見極めに必要な時間も短くなり,攻撃系と防御系のスタンスを複数使えるようになることで,アドベンチャーにも深みが出てくるだろうと開発者は言う。パーティを組んでのプレイでは,このスタンスの豊富なことが利点になっているはずだ。
また"シンパセティック"(交感)というシステムは,グループで特定のキャラクタークラスが,別のプレイヤーキャラクターの持つ武器に反応し,特別なボーナスパワーを与えたりコンボ技を発動したりするというものだ。
これは説明があっただけで,実際にデモで見ることはできなかったが,クラフティングにおいても,共同で作業することで,より高級なアイテムを作り出せるという。どのようなキャラクターや武器のコンビネーションが良いのかは実際に遊んでいくうちに個々のプレイヤーが学んでいくものらしく,知識を求めて,初めて出会った人とパーティを組む楽しみも出てくるかもしれない。
Vanguard:Saga of Heroesは,2006年中のサービス開始ということで,現在でもまだα版の段階だ。しかし会場で行われていたデモは,すでにサンディエゴのサーバーと直結しており,実際のMMORPG空間で行われていたもので,昨年に比べるとかなりの進展が見られる。βテストの段階はハッキリしなかったが,年内中のスタートは十分にあり得る。
大作で,すでに多くのMMORPGファンから注目を集めている割には,案外と地味な出展だったのが気掛かり。MicrosoftがXbox 360に情熱を注ぐのは仕方がないことかもしれないが,同社が本来注力すべき"Windowsプラットフォーム"も,忘れないでほしいものだ。(奥谷海人)
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