インタビュー
「パンヤ」インタビュー:PC版&Wii版のプロデューサー二人に聞く,それぞれの未来
そしてここまで大きく成長したパンヤは,PCだけの枠に収まりきれなくなったのか,コンシューマゲーム機や携帯電話にも進出している。とくにWiiの本体と同日に発売された「スイングゴルフ パンヤ」はかなり好評のようで,2007年11月29日(木)にはその続編,「スイングゴルフ パンヤ 2ndショット!」(以下,2ndショット!)の発売が予定されている。
(Wii版)前作の経験者にとっては,今回どのような点がパワーアップしているのか,気になるところだろう。そしてもう一つ,PCとWiiはプラットフォームやプレイヤー層などが大きく違うことから,それぞれのパンヤが今後どのように展開していくのかも,きっと気になるはず。今回は主にこの二点について,ゲームポットでPC版パンヤのプロデューサーを務める前田有希氏と,Wii版2ndショット!のプロデューサーを務めるテクモの柴田剛平氏に話を聞いてきた。
アリンやクーが喋る!「スイングゴルフ パンヤ 2ndショット!」
本日はよろしくお願いします。
早速ですが,もうWii版の続編が発売されるんですね。なんだか,前作が出たのは,ついこの間のような気がしますが。
柴田氏:
ありがとうございます。
前作の売れ行きは,発売直後から手応えを感じていました。ただ開発側としてはベストを尽くしたつもりでいても,あとから見ると「こうすれば良かったね」という改善点がどうしても出てきてしまいます。そんなことをゲームポットさんと話していたところ,続編を出そうということになりました。
4Gamer:
そういった経緯があって,2ndショット!が生まれたんですね。
ではそもそも,Wiiでパンヤをリリースしようという話は,どこから生まれたのですか?
柴田氏:
Wiiというコンシューマゲーム機が発売される前,Wiiの特徴を生かしたゲームの企画を考えていたんです。やはりWiiリモコンが最大のポイントなんですよね。ちょうどゲームポットさんとは以前からお付き合いがあったんですが,そこでパンヤに出会って「コレだ!」と。リモコンをスイングして遊べるゴルフゲーム,というのがとてもしっくりきたんです。開発期間はとてもタイトで,1年未満だったと記憶しています。
前田氏:
パンヤがPC版のみだった頃から,この世界をもっともっと広げていきたいとは思っていたんです。とはいえ,当社は運営を専門にしているわけで,なかなか新規の開発というのは難しいんですよね。そんなときにテクモさんとのお話があって,これは面白いものを作れるのでは? ということでパンヤの開発元であるNtreevさんを紹介させていただいたのです。
4Gamer:
コンシューマゲーム機では,ゴルフゲームもいろいろありますよね。そんな中で,なぜテクモは,パンヤというブランドを選択したのでしょうか。
まずは,魅力的なキャラクターを含めた世界観ですね。そしてもう一つは,秀逸なコースデザイン。オーソドックスなリゾート風のコースから,氷の世界や溶岩の流れる魔界といったユニークなものまでいろいろあって,楽しいですよね。現実にはありえないシチュエーションですが,パンヤの世界だからこそ思いっきり楽しめるというところです。もちろん,ゴルフゲームとしてしっかりしているからこそ,これらが生きているわけですが。
こういったことから,パンヤをコンシューマゲーム機に持ってきても,十分勝負できると判断しました。
4Gamer:
それから約1年を経ての2ndショットの登場となるわけですが,今回のポイントはどこにありますか?
柴田氏:
今作の大きな特徴として,ゲーム内の各キャラクターが,ティーショットやホールアウトなど,いろいろな場面で喋るようになったことが挙げられます。声優さんを選ぶときには,ゲームポットさんに協力していただき,PC版のプレイヤーの方を対象にアンケートを取ってもらいました。
前田氏:
実はこれまでも,PC版のプレイヤーから音声を入れてほしいという要望はあったんです。でも,技術面や世界観などの問題もあって,なかなか踏み切れなかったんですよ。それが,コンシューマゲームで実現することになったというのは,個人的にはある意味で衝撃でした。
ただ,声については人によってイメージが違うので,できるだけ多くの人の好みに合うように……ということで,6〜7月頃にアンケートを取った次第です。
4Gamer:
アンケートの結果はどうでしたか?
例えばキャラクターによって票がばらけたりといったようなことは,ありませんでした?
柴田氏:
印象深かったのはクーですね。
この声は釘宮理恵さんに担当してもらっているのですが,実は票がほとんどばらけなかったんですよ。きっとファンの方達が持っていたクーのイメージと,釘宮さんの声がぴったり合ったんでしょうね。一方エリカに関しては,3人ぐらいの候補への票数が,最後まで競り合っていました。
カズは導入からそれほど時間が経っていなくて,プレイヤー達の中ではイメージが固まっていないのでは……? と思っていたのですが,実際はそうでもなかったようで,すんなり決まりました。
4Gamer:
8人いるキャラクターのうち,最終的に何人ぐらいがアンケート結果に沿う形で実装されたのでしょうか。
柴田氏:
一部の声優さんはスケジュールなどの都合で,依頼できなかったんですが,それでもほとんどのキャラクターはアンケート結果のトップの中から選ぶことができました。
4Gamer:
なるほど。(実際にプレイしながら)……なんというかこれは,ちょっと照れますね(笑)。実際に聞いてみるとかなりの衝撃を受けると思うのですが,何らかの手段で試聴などはできるのですか?
柴田氏:
声優さんの権利関係もあるので,音声だけを直接試聴することはできません。ただ,オープニングムービーに一部の音声が入っていて,これは公式サイトで公開しています。このムービーを見てもらえば,大体の雰囲気は分かると思いますよ。
4Gamer:
この試みが成功したら,PC版にも音声を導入するプランがあったりなどは……?
前田氏:
まだ確定はしていませんが,Wii版の発売と同時期に導入するWii連動アイテム以外で,PC版独自の音声の出るアイテムを考えています。どの声優さんの音声を使うかなどの詳細は,実際の導入を楽しみにしていてください。
オフラインでの対戦プレイを盛り上げる各種ゲームモードが追加
声の実装以外では,どういった点がパワーアップしているのでしょうか。
柴田氏:
大きなところとしては,ゴルフの対戦をしながらマップ上を進んでいく“ツアーモード”の導入が挙げられます。最初はケンとエリカのどちらかを選んでスタートするのですが,コースを勝ち進んでいくと使えるキャラクターやキャディが増えていくんです。例えば,最初のマップのボスはダイスケで,これをゴルフで打ち負かすと「よっしゃ,俺も一緒に行くぜ」と。
前田氏:
ロールプレイングゲームというか,少年漫画的なノリですね。
4Gamer:
なるほど。それはPC版のプレイヤーでも楽しめそうですね。そういえば,Wii版の前作には,一人用の“ストーリーモード”がありましたよね。あれに対する,PC版のプレイヤーからの反響はいかがでしたか?
前田氏:
PC版のパンヤでは,キャラクターのバックボーンはあまり出せていませんでした。なので,各キャラクターの話し方などは,プレイヤーが思い描くことしかできなかったのですが,これが補完されたので好評だったと思いますよ。
4Gamer:
これらのストーリーは,日本側が独自で設定しているのでしょうか?
前田氏:
開発にあたって,パンヤの開発元である韓国のNtreevのスタッフとも密に連絡を取り合いました。我々の「このキャラクター設定ならこういった会話をするよね?」といった提案には感心してくれていましたね。
4Gamer:
確かに,キャラクターが人格を持って一人歩きするのって,とても日本らしいですよね。そのほかには,どういった点が変わっているのでしょうか?
みんなで遊ぶ“パーティモード”の中に,ショットで風船を割る“バルーンクラッシュ”というオリジナルのゲームがあるのですが,それがとても好評だったんです。今作ではこれに加えて,グリーンに描かれた的を狙って点数を競う“アプローチダーツ”と,ブースターゲートを駆使して出来るだけボールを遠くに飛ばす“ブーストドラコン”の二種類を追加しているので,楽しみ方のバリエーションが広がっています。
4Gamer:
シンプルながらも友達などと対戦すると,相当燃えそうなミニゲームですね。これは,PC版でもやりたいと思う人も多そうです。
前田氏:
PC版にも「アプローチショットバトル」はありますが,こういったミニゲームは短時間で遊べるのでとても良いですね。我々としてもNtreev側に何度も提案してるのですが,なかなか実現までには至らなくて……。正直言って,最初に企画書を見たときに「これはやられた!」と思いました。
柴田氏:
あとは細かいところなのですが,ショットに入るまでの手順やカメラの操作などをブラッシュアップしています。例えば画面左下に“スイングバロメータ”というUI(ユーザーインタフェース)を用意しました。自分がリモコンをスイングした方向が曲がっていないかを直ちにチェックできるので,例えば素振りと併用すると簡単かつ効果的な練習ができるんです。
4Gamer:
一人でも好きなだけ練習できるわけですね。
PC版に,特殊ショットを一人で練習できるような環境がないのとは,ある意味では好対照ですよね。
前田氏:
その機能があると,確かに便利だとは思います。でも,多くの人がそこに篭もってしまうのでは? という懸念があるんですよ。せっかくオンラインで遊べるのに,一人遊びに終始してしまうのはどうかなと。PC版での対コンピュータ戦についても,要望は数多くいただいているのですが,それも同じ理由で見送っています。ただ,オンラインの特性を生かした打ちっぱなし的なものは,何らかの形で入れてみたいですね。
4Gamer:
オンラインで遊ぶことが前提のPC版と,オフラインが前提のWii版では,このあたりの仕様にも差がうまれるものなんですね。
Wii版パンヤが受け入れられた理由
実はパッケージ販売のWii版は,プレイヤーにとって初期のハードルが高いのでは? と心配していたのですが,実際はそうでもなかったからこそ,2ndショットの発売に繋がったということですよね。どのあたりがポイントになって,前作が受け入れられたとお考えですか?
柴田氏:
確かに,コンシューマゲーム機向けの作品である以上,初期コストの問題は避けられません。単にPC版のパンヤを移植するだけでは通用しなかったでしょうね。なので,ストーリーモードやパーティモードなど,PC版にはない付加価値を付けることで,満足感を得ていただけるのではないか,と考えました。
アイテム課金の場合も同じだと思うのですが,価値があるものであれば,きっと納得してもらえると思うんですよ。
前田氏:
そしてその結果,PC版とWii版のゲームモードは,うまく棲み分けができたと思います。何より,実際に立ち上がってスイングして遊ぶというのは,PC版にはまったくない要素ですし。個人的には,PCの前に座りっぱなしで運動不足だなーと思ったときに,立ち上がってWii版をプレイして気分転換するのが理想だと思っています。
4Gamer:
Wii版のプレイヤーは,PC版の経験者が多いのですか?
柴田氏:
もちろんPC版経験者の方も沢山いましたが,初めて触れられるという方も想像以上に多かったですね。
PC版を相当やり込んだ方もいるので,彼らにとっても手応えを感じられるものを当初は目指していました。しかしWii版で初めて遊ぶ人にとっては,少々複雑に映った部分もあったようです。この点を踏まえ,今回はキャラクターのパワーアップを分かりやすくするために,一部のシステムをシンプルにしました。
初心者に対して,より間口を広くしたのが2ndショットというわけなんですね。
ところで前作では,PC版とWii版とのコラボレーション企画が行われましたが,これをきっかけにPC版を始めたプレイヤーもいたのでしょうか?
前田氏:
Wii版で初めてパンヤを知って,新たにPC版をプレイしてくれたという人は,ちらほら見受けられました。あのコラボレーションを行った頃は,丁度「Season 3」が導入された直後ということもあったので,相乗効果でプレイヤー数が一気に増えたんです。
4Gamer:
2ndショットでも,PC版とのコラボレーション企画は予定されていますよね。すでに一部は発表されていますが,こちらの内容を教えていただけますか?
柴田氏:
ツアーモードをある程度進めると3種類のアイテムコードが得られ,これらをPC版で入力すると,本来Wii版にしか登場しない全キャラクターのコスチュームがそれぞれ1着ずつ,PC版で着られるようになります。また,Wii版に登場するキャラクターをモチーフにした,オリジナルマスコットも獲得できます。これはバルーンクラッシュに登場するクマのキャラクターで,風船に乗った姿なんですよ。
4Gamer:
マスコットは人気が高いですよね。特典で入手できるマスコットには,使用期間の制限などはあるのですか?
前田氏:
いいえ,期限を気にすることなく使えるようにします。ですから,以前登場した“アンダーソン”と同様,プレイヤーも喜んでくれるのではと思っています。何より見た目が可愛いですし。
柴田氏:
このクマ,風船のことをお兄さんだと思い込んでいるんです(笑)。
4Gamer:
そういう設定があるんですね。でも結局,バルーンクラッシュで割られちゃうという……(笑)。
PCとWii,それぞれのパンヤの未来
パンヤといえばもともとはオンラインゲームなわけですが,Wii版で今後,オンライン対戦機能を実装する予定などはないのでしょうか。
柴田氏:
そこは開発で何度も協議したところです。オンライン上でのコミュニティ展開は,すでにゲームポットさんがPCでやられています。また,現状のWiiは知人同士がオフラインで顔を合わせて,わいわい遊ぶのが主なプレイスタイルだと思います。
ですからWii版のパンヤは,ネットワークに繋げることよりも,オフライン環境をいかにして盛り上げるか,というところに注力しています。
4Gamer:
なるほど,Wiiのユーザー層を踏まえた上での判断ということですか。
前田氏:
そうすることによって,PC版との棲み分けができるのも大きなメリットですよね。これはプラットフォームが異なるからこそ,出来る棲み分けとも言えます。
柴田氏:
特徴的なのはバルーンクラッシュなんですが,例えば相手の番のときに,待っているプレイヤーが自分の持っているWiiリモコンを使って画面内に落書きをしたりして,ショットしようとしているプレイヤーを邪魔できるんです。こうやって,退屈することなくみんなで遊べるようになっています。
これもオフラインで,わいわい遊ぶときのための機能なんですね。
さて,そろそろまとめに入らせていただこうと思います。ずばり,パンヤというブランドは,今後どのように発展していくのでしょうか? 例えば,ニンテンドーDS版だとか……。タッチペンやWi-Fiといった環境で遊ぶのも面白そうだと思うのですが。
柴田氏:
現在はWiiに注力していますが,可能性としてはゼロではありません。ゼロではないってだけで,まったくの未定ですけど(笑)
前田氏:
プラットフォームだけでなく,今後はもっといろいろな方向性を考えてみたいですね。極端な話,ゴルフゲームじゃなくてもいいのかな? とか。
4Gamer:
なるほど,キャラクターに魅力があるからこそ,さまざまな可能性が考えられるわけですね。いろいろと想像が膨らみます。
それでは最後に,お二人から4Gamerの読者向けにメッセージをお願いします。
前田氏:
パンヤは正式サービス開始から3周年を迎え,これを記念したイベントをいくつも用意しています。また,12月16日(日)にパシフィコ横浜で開催される「Gamepot Festa 2007」では,第3回パンヤジャパンカップの決勝大会を行います。さまざまな方向へ発展していくパンヤを,今後ともよろしくお願いします。
柴田氏:
2ndショット!には新コースの“ディープインフェルノ”“ピンクウインド”だけでなく,PC版で夏に追加された“アイススパ”も実装しています。PC版にはないゲームモードもあって,一人で遊んでもみんなで遊んでも楽しめるゲームになっていますので,PC版のプレイヤーの方も,ぜひ一度プレイしてみてください。
4Gamer:
今日はありがとうございました。
今回話を聞いて実感したのは,PC版とWii版とで進む方向性は違うものの,やっぱり“両方ともパンヤなんだなぁ”,ということだ。そもそもプラットフォームが違うのだから当たり前といえば当たり前だが,結果的に両者がお互いのパイを食い合わず,手を取り合って発展しているという,理想的なケースになっているようだ。
ちなみに,PC版の人気ぶりについては今更4Gamer読者に説明する必要はないと思うが,実はWii版もかなり凄い。Wiiで発売されている全タイトルの中で,「スイングゴルフ パンヤ 2ndショット」は続編がリリースされる初めてのタイトルなのである。
最初は単なるカジュアルゴルフゲームだったパンヤのキャラクターに息吹
を与え,大きな成功を収めたゲームポットの功績は計り知れない。また,これだけキャラクターが立ったゲームであれば,アクションゲームやRPGなど,さまざまな展開も期待できるというもの。PCオンラインゲーム発のタイトルが,このようにコンシューマゲーム機でも結果を収めているというのは,PC版のファンとして,ちょっと誇らしい。
そんなパンヤのキャラクター達とゲームポットの行く末は,ぜひとも注目をし
ておきたい。そう思ったインタビューだった。
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