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[GDC 2024]「EVE Online」のグラフィックスは,この10年で激変した。進化の歴史とその背景を振り返る
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印刷2024/03/19 18:10

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[GDC 2024]「EVE Online」のグラフィックスは,この10年で激変した。進化の歴史とその背景を振り返る

 CCP Gamesがサービス中の「EVE Online」PC / Mac)は,2003年の正式サービス開始以来,進化を続ける宇宙を舞台にしたMMOの代表格的な存在だ。20年以上もサービスが行われているゲームということで,数々のアップデートが繰り返され,サービス当初と比べるとさまざまなコンテンツを追加し,グラフィックスもクオリティがアップしている。
 そんなEVE Onlineをテーマにした「Reigniting Stars: A Decade of VFX in 'EVE Online'」と題する講演が,Game Developers conference 2024の初日に行われた。CCP GamesのAndre B.Bragason氏が,過去10年にわたるEVE OnlineのVFX(ビジュアルエフェクト)の進化と,その背景にある技術について語るという内容だ。

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「EVE Online」公式サイト


Andre B.Bragason氏
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 Bragason氏は,2007年にインターンとしてCCP Gamesに入社後,一貫してEVE Onlineのグラフィックス改善に携わってきたという。EVE Onlineがサービスインした2003年当時は最先端を走っていたが,2010年ごろには時代遅れになってしまっていた。

 開発チームはその状況を良しとはせず,EVE OnlineのVFXを一新するプロジェクトに取り組み,この10年はビジュアル面でも進化を繰り返している。

 大きな変化は2015年にあり,新しいビジュアルダメージシステムが導入された。これは,宇宙船の周囲に展開するシールドの影響や装甲の損傷をリアルタイムで視覚化するというものだ。アニメーション化されたテクスチャを使用することで,戦闘中の船の状態を,以前よりも鮮明に表現できるようになった。

20年で50回以上の大型アップデートが実施された
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 2016年には爆発時のエフェクトシステムが導入され,戦艦や宇宙船などが破壊されたときのビジュアルががらりと変わった。具体的には,宇宙船の損傷箇所に応じて爆発が広がるようになり,それまで以上にリアルになったそうだ。
 ただ,リアルと説明されたが,現実の宇宙空間での破壊の様子を忠実に再現したというわけではなく,多くの人がイメージするものに近づけたということだろう。

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 EVE Onlineの巨大な艦隊戦は伝説的であり,過去最大の一戦では8000人以上のプレイヤーが14時間にわたって戦った。だが,そうした映像ではグラフィックスの表現として古典的な手法が使われていたという。爆発の中心から超巨大なフレアと低強度の点光源を発生させ,シーン全体の色調を映画的に操作していたそうだ。

8825人のプレイヤーが14時間も戦いを繰り広げた
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 しかし,この手法は立体的な表現が難しく,遠距離の撮影に適さないことから,Bragason氏は複数のパーツで形成する3次元的な爆発エフェクトを生み出した。近景と遠景では見え方が変わり,カメラが最大600kmまで離れた位置からでも見栄えが良いエフェクトになったという。

 開発チームは星の見せ方にもこだわった。星々をさらにリアルで魅力的にするため,太陽の表面を撮影した画像を参考にし,星の見た目を改善している。さらに,開発チームは星のテクスチャをさまざまなスケールで重ね合わせ,Photoshopで画像処理を行い,星々が宇宙空間で自然に輝くように見せる工夫を施したという。
 こういったアプローチにより,星々は実際の天体のように輝き,プレイヤーに深みのある宇宙体験を提供できるようになったそうだ。

星の見せ方も大きく変わったようだ
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 また,サービスイン当初は,エフェクトの作成と編集に時間がかかる仕様だったが,開発チームはエフェクトエディタを改良している。このツールはテクスチャやジオメトリなどのリソースを迅速に選べて,さまざまな組み合わせを試しやすくなっているため,偶発的な組み合わせを見つけることが容易になったそうだ。

 プレイヤーの行動とゲーム内で起きることが,リアルタイムでビジュアルに反映される取り組みも行われた。これを実現するためにエフェクトが状況に応じて変化するように設計したことで,戦闘の状況によって宇宙船が受けるダメージの違いがビジュアル的に表現できるようになったという。

 初期のころは,宇宙船のどこに被弾したかなどは大雑把なものだったが,今は視覚的に宇宙船の状況を把握できる。小さな変化だが,プレイヤーは自分の行動がゲームに影響を与えていることをさらに実感できるようになり,ゲーム全体のリアリティがアップした。

 こういった細かなアップデートのほか,ゲームエンジンそのものも刷新した。これにはエフェクトのプリセットやコンポーネントのライブラリ化も含まれており,アーティストは直感的にのやりたいことを見た目に反映できるようになったそうだ。

 エンジンのアップデートは,EVE Onlineのグラフィックスにおける決定的な転機となった。その後,必要に応じて機能を追加していくことで,プレイヤーの行動とエフェクトをシームレスにリンクできるようになったからだ。

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 これにより,2021年に実装された「Jump Gates」では,プレイヤーの動きに合わせてエフェクトが自動的に発生させられるようになった。また,プレイヤーが操作する宇宙船に発生するエフェクトも,宇宙船の移動に同期するように作り直された。さらに,プレイヤーの人数に応じてエフェクトのスケールやタイミングがランダム化されたり,カメラの位置に合わせてエフェクトの見え方が最適化されたりといった高度な調整が行われている。
 それ以前の多数の宇宙船が集まる場面などは,エフェクトが画一的になり,どうしてもコピペ感があった。だが,この調整によって,さまざまな宇宙船が集まっている演出となり,安っぽさが改善されたと言えるだろう。

 過去10年間におけるEVE Onlineのビジュアルエフェクトの進化は,技術とクリエイティビティの融合による成功の物語だと表現していた。開発チームはプレイヤーに最高の体験を提供するため,継続的にビジュアルエフェクトを改善している。これからもそのビジュアルエフェクトでプレイヤーを驚かせ,没入感のある宇宙体験を提供し続けてくれそうだ。

 この講演では,EVE Onlineがただのゲームではなく,進化し続ける宇宙であることが強調されていた。開発チームの情熱と技術の進歩により,今後も新たな高みを目指していくのだろう。

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