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[TGS 2012]アジア・ゲーム・ビジネス・サミット2012「境界線なきソーシャル&モバイルゲームの時代到来? アジア圏で勝ち残るゲームビジネスとは」
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印刷2012/09/23 00:00

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[TGS 2012]アジア・ゲーム・ビジネス・サミット2012「境界線なきソーシャル&モバイルゲームの時代到来? アジア圏で勝ち残るゲームビジネスとは」

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アジア・ゲーム・ビジネス・サミット2012


 「アジア・ゲーム・ビジネス・サミット」はアジア圏を中心としたゲームビジネスの拡大を促進するための国際会議で,今年で3回目の開催となる。
 「境界線なきソーシャル&モバイルゲームの時代到来?! アジア圏で勝ち残るゲームビジネスとは」と題された今回は,中国・インドネシア・韓国・日本から大手パブリッシャ・デベロッパの経営者が集い,アジア全体で見たときにいまだ成長途上にあるソーシャル&モバイルゲーム市場の,課題や展望に関してパネルディスカッションを行った。

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「アジア・ゲーム・ビジネス・サミット」公式サイト



アジア4か国からのパネリスト


 パネリストは以下の4名。

 中国からは,中国最大のSNS(アクティブユーザーは1億6千万人以上)である人人(レンレン)上級副総裁の何川(カ・セン)氏。レンレンは中国におけるWebゲームのパイオニア的存在でもあり,またユーザーの40%がモバイルデバイスからのアクセスということもあって,マルチデバイス/マルチプラットフォーム対応を得意としている。もともとが大きい中国のゲーム市場は,Webゲームやモバイルゲームを中心にさらに拡大傾向にあり,レンレンは自社開発とパブリッシング,業務提携などを通じ多くのタイトルを多方面でサービスしている。

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 インドネシアからは,Agate Studio(アゲート・スタジオ)のCOO,ジェニー・アプリリア氏。アゲート・スタジオは,2009年にアプリリア氏が「ゲームを通じて世界がより幸せになることを手助けする」ことを目標として立ち上げたゲームデベロッパである(ちなみに当時アプリリア氏は18歳の大学生)。18人の社員,資本金ゼロでスタートし,最初の給与は月5ドルだったという。2012年現在,アゲート・スタジオはインドネシア最大のゲームデベロッパであり,この3年で開発したゲームは120本。現在は,同時に20のプロジェクトを同時進行させる能力を有する。

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 韓国からは,NHNハンゲーム スマートフォン事業部理事のチェ・ユラ氏。4Gamer読者にもお馴染みのハンゲームは,1999年からPCオンラインゲームの開発やパブリッシング,チャネリングなどを行ってきたほか,サーチエンジンも提供してきた。韓国でのハンゲーム会員数は,韓国人口の半分をカバーするという。またSNSとしてNaverをサービスするほか,近年リリースしたLINEはアジア圏で爆発的に利用者が拡大,6000万ユーザーを有するサービスに成長している。LINEはソーシャルゲームのプラットフォームとしても動き始めており,多角的な展開を行っている。

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 日本からは,ディー・エヌ・エー取締役の小林賢治氏。mobageをサービスするDeNAについては説明不要ということで,会場では日本のソーシャルゲームの現状が簡単に解説された。
 2012年,日本のソーシャルゲームの規模は3429億円で,コンシューマゲームの規模を上回っている。だが小林氏はここで,2008年段階での市場規模が4.9億円と,市場と言えないレベルであったことに言及。ごく短期間で急成長した稀有な産業であることを確認した。この急激な拡大の背景には「一つの大きな成功例が発生し,それが業界を動かしてきた」と氏は分析する。
 ソーシャルゲームのグローバル展開に関しては,モバゲーがサービスする「神撃のバハムート」の英語版「Rage of Bahamut」がGoogle PlayとApp Storeの両方で長期にわたって1位を獲得。この成功は「ただの成功ではなく,これまで『海外では日本のような収益パターンは出ない』とされてきたモバイルソーシャルゲームにおいて,海外でも同じ収益パターンが発生することが確認されたという点で大きな意義を有する」と小林氏は語る。
 「日本のソーシャルゲームは,世界を取れるポテンシャルがある」という氏の言葉は,Google PlayとApp Storeのランキング上位10位のうち,半数近くが日本製のゲームであることでも証明されていると言える。

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モバイルデバイスのOSについて


 パネルディスカッションでは,まずモバイルデバイスのOSのシェア比率について討議された。iOSやAndroidといったOSのシェアは,世界全体での比率は出ているものの,ローカルでの事情はまた異なる。

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 インドネシアでは,まだまだフィーチャーフォンが中心であるという。OSの比率としてはAndroidがトップで,続いてBlackberry,かなり差が開いてiOSで,SymbianOSも多い。大都市ではスマートフォンが普及しているが,地方ではフィーチャーフォンというのが現状のようだ。
 Agate Studioでは特定のOSを狙って開発ということはしておらず,ゲームの楽しさを主眼においているという。また内製のゲームエンジンを有しており,マルチプラットフォームでの展開を容易にしているとアプリリア氏は語る。

人人(レンレン)上級副総裁の何川(カ・セン)氏
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 中国ではAndroidが中心で,iOSが続くという状況。SymbianOSやフィーチャーフォンも多いが,フィーチャーフォンからスマートフォンへの移行はかなり急速に行われており,2012年のスマートフォン出荷台数は1億台に達する。また中国ではスマートタブレットが広く使われているのも特徴であるという。
 とはいえビジネスとして見た場合,iOSが重要になる。デバイスの数ではAndroidの50〜60%しか存在しないiOSだが,ARPPUで見るとiOSユーザーはAndroidユーザーの4倍から5倍を示すという。Androidは機種依存が強いだけでなく,中国にはGoogle Playが存在しないため,Androidベースでのマネタイズは非常に苦労するとカ・セン氏は語った。

 韓国ではAndroidが圧倒的に普及しており,その比率は70%に達する。続いてiOS,Windows Phoneという順番。人口の半分がスマートフォンを使っており,乗り換え比率も高い。またゲーム市場に限定すると,さらにAndroidユーザーの比率は高まるという。韓国ではApp Storeのプリペイドカードが扱われていないため,クレジットカードが使えない若年層は必然的にAndroidを選ぶことになるようだ。
 一方,クレジットカードが使える20代女性はiOSのユーザーが多く,チェ・ユラ氏は「ゲームはターゲットによって変わる。グローバルマーケットを攻めるなら,対象ユーザーのことを考える必要がある」と指摘した。

 日本の事情はよく知られているので,小林氏はグローバルにおける予想とOS戦略を解説した。
 まず氏は,iOSは「見通しが立てやすい」と語る。またアメリカ市場はiOSオンリーと考えてよいと指摘した。
 一方,Androidは機種依存の大きさが課題となる。アプリでもWebでも,iOSとAndroidの双方を攻めておくことは重要だが,各種ゲームエンジンやHTML5を用いても,なかなかAndroid OSのスマートフォン全部では動いてくれない,と氏は語る。DeNAではゲームエンジンngCoreに改良を重ね,またFlashの変換エンジンを整備することで,開発の標準化を進めているという。


開発コストは高騰を続けるのか?


 続いて,スマートフォンの高機能化で開発コストはどうなるかという問題が討議された。リッチコンテンツは必然的に開発コストが上昇し,コンソールゲームでは数十億円という開発費がかかることも珍しくない。

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 小林氏は,開発コストが上がってきていることを認めつつ,「意志を持ってコストを抑えるべき」と語る。というのも,ゲームがリッチになっても,必ずすべてのユーザーが喜ぶとは限らないからだ。氏は「Infinity Bladeのようなリッチなゲームが存在することは大事だが,そういったリッチなゲームしか存在しなくなってしまうのは良くない。ダウンロードに長時間を必要とし,ゲームの起動にも時間がかかる作品は,隙間時間で遊ぶのには不向き」と指摘,「ライトでシンプルなゲームも求められている」と語った。
 またソーシャルゲームの場合,1か月に4回のイベントを,2年にわたって行えるようなフットワークが必要となる。これを実現するためには,開発人数は15名程度と小規模になり,この人数はアプリ版でも変わらないという。

Agate Studio(アゲート・スタジオ)のCOO,ジェニー・アプリリア氏
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 アプリリア氏は,クリエイティブサイドとテクノロジーサイドのバランスを取り,効率良くゲームを制作していくことが重要だと述べた。「シンプルであっても,楽しければ受け入れられる」と氏は語る。

 チェ・ユラ氏は,「2つの道がある」と指摘する。まずは,大容量でハイスペックなゲーム。これはコンソールゲームユーザーが楽しむゲームとなる。
 一方,スマートフォンによって,主婦やお年寄りなどこれまでゲームをしなかった人がゲームを楽しむようになってきた。こういった層からは,すぐ遊べて軽いゲームが望まれると氏は語った。

 カ・セン氏もまた,スマートデバイスは今までゲームを遊んだことのないニューカマーを多く含む市場であり,シンプルなゲームを提供することの重要性を指摘した。
 またスマートデバイスのゲームは,コンソールゲームやPCのブラウザゲームをそのまま移植するのではダメだと氏は語る。スマートデバイスならではのイノベーションがなくては,市場に受け入れられないのである。

ソーシャルゲームのトレンド


 さて,ソーシャルゲームが「出せばヒットして高収益」な時代は遥か過去の神話となり,現在では様々なトレンドを掴んでおく必要がある。ソーシャルゲームのトレンドは,各国でどのように違うのだろうか。

NHNハンゲーム スマートフォン事業部理事のチェ・ユラ氏
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 韓国の場合,PCベースのソーシャルゲームは育たず,スマートフォン時代になって急成長したとチェ・ユラ氏は語る。それまで韓国のゲームシーンは一人,あるいはオンラインで不特定の誰かとプレイするものだったが,スマートフォン時代になってフレンドと一緒に遊ぶというモデルが成立した。
 スマートフォン時代になってからは,カジュアルゲームが流行している。ソーシャルゲームも普及し始めているので,こちらにも力を入れていきたいとチェ・ユラ氏は語った。
 また日韓での市場傾向の違いという点については,「App Storeについて言えば,北米・ヨーロッパ・アジアは傾向が同じで,唯一日本と韓国だけが異なる性質を持つ」と分析している。
 韓国の場合,10〜20代の若者にはRPGやFPSなど対戦するゲームがヒットするが,スマートフォンの普及によって女性(OL・主婦)や40歳以上のユーザーがゲームを遊ぶようになっている。こういった層には,クラシックなパズルがヒットすると氏は指摘した。

 中国ではRPGが一番人気で,アクション性のあるMMORPGが強い。またストラテジーゲームにも人気がある。
 日中の差という点では,カードゲームは中国ではあまり受けていないとカ・セン氏は指摘。中国市場ではカジュアルゲームとRPGのハイブリッドがヒットするのでは,と予測している。

 インドネシアでもクライアントベースのオンラインゲームは人気で,FPSやRPGが安定して強い。またほかの地域同様,既にゲームを楽しんできたユーザーと,ZyngaのソーシャルゲームやAngry Birdのようなカジュアルゲームで初めてゲームに触れたユーザーの,2つの層があるという。

 小林氏は,ソーシャルゲームというムーブメントそのものに対し見直しが必要であると指摘する。「ソーシャルゲームは急に出てきたものではない」というのが氏の主張だ。実際,古くはファイナルファンタジーやドラゴンクエスト,スーパーマリオといった多人数向けとは言えないゲームを,同じ部屋・空間で同期的に遊ぶという形態は存在した。

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 そして格闘ゲームのブームを皮切りに,「見知らぬ人との対戦(競争)」が一気に普及。また携帯ゲーム機でポケモンがヒットしたことで,「収集・育成・対戦・交換」という要素を軸にユーザーの交流が行われるようになった。また国産MMORPGにヒット作(ファイナルファンタジーXI)が出ることで,日本でもオンラインゲームの認知度は急上昇する。このような流れの上に,ソーシャルゲームは存在している。

 ではソーシャルゲームはなぜこれほどにヒットしたのか。

 小林氏は,ソーシャルゲームの中心的なユーザーとなっている30代男性が「今でもゲームは好き」であり,「ゲームは好きだが,忙しくてなかなかプレイできない」という傾向を有していると語る。睡眠時間・就業時間・食事時間といった固定時間を除くと,人間が消費可能な時間はかなり限られているのだ。

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 この状況に対し,「1日5回のアクセス,それぞれ7分」でプレイできるソーシャルゲームは,「35分のゲーム」とトータルでは同じ時間だが,まったく違う意味を持つ。毎日毎日35分の連続した時間を確保するのは大変だが,7分を5回はそれほど難しくない。
 小林氏は,グローバル市場においても「ユーザーが毎日,集中してゲームを楽しむ時間を確保するのは難しい」と指摘する。近年のソーシャルゲームで流行しているリアルタイム・チームバトルは,FPSのチーム戦を戦っているような感覚を得ることができるが,FPSのようにまとまって集中する時間が不要という点で,ユーザーの負荷は低いというわけだ。


人材を確保するために


 さてコンテンツ・ビジネスであるゲーム産業は,人材が要となる。優秀な人材を確保し,維持するためには何が必要なのだろうか。

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 カ・セン氏は,中国は労働力は多いが,人材を確保するのは難しいと語る。優れた人材を惹きつけるためには,会社が良いビジョン,良い文化を示す必要がある。また良い組織を構築したり,あるいはストック・オプションを提示したりといったインセンティブも必要だと指摘する。「良い人材を得るためには,良いサラリーが必要」という言葉は,自明と言えば自明だが,非常に強い説得力があるといえるだろう。

 チェ・ユラ氏は,作りたいゲームに対して情熱を持っている人材が重要であると語った。また,インターネットビジネスは,新しいトレンドが生まれる最先端でもある。そのためNHNではNEXTという大学を設立,そこでは実務を通じて学ぶ機会も与えているという。そうすることで,トレンドの変化にすぐ対応できる人材を得ていくのである。

ディー・エヌ・エー取締役 小林賢治氏
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 小林氏は,職種を問わず,ユーザーに対する想像力を持ち,普通の感覚で判断できる人材が欠かせないと言う。「例えばLINEは,技術的に言えばSkypeからログイン画面と手続きをカットして,デコメ的要素を足したサービス,と判断できてしまう。だが実際にLINEを使ってみると,そういった足し算引き算とLINEの実態とは,まったく異なっていることが分かる。LINEには『普通』の感覚と,こだわりがある」と指摘。ユーザーはほんの小さな差をジャッジしてくるため,そこに敏感でなくてはならないと述べた。

 アプリリア氏は,人材は世界中で奪い合いになっていると指摘。事実インドネシアでは,氏がアゲート・スタジオを設立するまで,優秀な人材は海外に出て行っていたと言う。ゲームのエコシステムを作ることを目標とするアゲート・スタジオは大学の講座も有し,そこから人材を確保している。
 また「会社にHappyな環境を作ることが重要」と語るとともに,ストック・オプションの提示なども行なっているという。


日本とアジア,アジアと日本


 ディスカッションの最後に,日本にとってアジアとはどのような意味を持ち,アジア各国にとって日本はどういう意味を持つかが語られた。

 小林氏は,日本が人口減少期に入っていることを踏まえると,ごく近隣で人口が増加している地域があることは重要だと述べた。しかし,その重要性は理解されつつも,これまで日本のゲーム産業はアジアへの展開を苦手としてきており,いわば「近くて遠い」地域となっていた。
 だがいま,スマートフォンによってボーダレス化のチャンスが生まれており,一方で日本のゲームはユニバーサルなニーズに対応することで今日の発展を得てきたという実績がある。「みんなで行って,みんなで勝ちたい」と小林氏はアジア市場への展望を語った。

 チェ・ユラ氏は,NHNにとって日本は最初に海外展開を成功させた土地であり,また社員の9割は日本で働いたことがあると語った。ゲーム開発の面では,「協力型のソーシャルゲーム」は日本から学ぶところが大きいと指摘する。

 アプリリア氏は,「日本はゲームのレジェンドであり,みんな日本のゲームを遊んできた」と語る。日本はロールモデルであり,日本から学べることは多く,また豊かなインスピレーションを得られると述べた。

 カ・セン氏は,日本市場の重要性を強調した上で,モバイル・オンラインゲームに関して最大の市場を有すること,またゲームそのものの歴史が長いこと,ゲームのユーザーも制作者も多いことを指摘する。「日中で協力して,両サイドでビジネスを展開していきたい」という氏の言葉で,アジア・ゲーム・ビジネス・サミット2012は結ばれた。

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「アジア・ゲーム・ビジネス・サミット」公式サイト

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