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男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第338回「ただ量を増やせば面白いってわけじゃない」
というわけで,プロレスラーっぽく巡業で移動時間が多いからニンテンドー3DSが大活躍したって話から転じて,今週は「ファイアーエムブレムif 白夜王国」(以下,白夜王国)が面白いって話をお届けできれば,と思っとる次第であります。
逆に言うと「白夜王国が面白い」という趣旨というかケツ論が初っぱなから出てしまっているので,ここから先はとくに読む必要はないんだけどね。また来週!
うん,「ファイアーエムブレム」シリーズは,やっぱりというか何というか,面白いわよね。それだけなら誰にでも言えるし,そもそもそんなことはみんな知ってるんだろうけどさ。私の場合,職業柄,どうしてこんなに面白いのかを考えちゃうわよね。で,私なりに考えた面白い理由をここに書いちゃうわ。なぜなら,それも仕事だから。そして今回はもうケツ論が出ちゃってるから,安心して脱線しちゃう。
まず,プレイする側は「商品を買って,このタイトルに時間を費やす価値があるかどうか」を判断するだけでいいの。もっと簡単に言えば,「面白いかどうか」を判断するだけでいい。でも,ビジネスとしてお金を受け取る側は,そうもいかないのよね。自分の商品がどのような面白さを提供できるか,説明なりプレゼンなりができなきゃいけない。
となると,説明するためには何が面白いのかってことを分析しなけりゃいけないわけね。先ほど“職業柄”って書いたのは,そういうことなのよ。私もプロレスラーという,面白いものを提供する職業に就いているから,考えちゃうのよね。
もう一つ脱線すると,私,コンプレックスがあるのよ。毎回こんな感じで偉そうにプロレスラーとしての視点からそれっぽいことを書いてはいるけど,プロレスラーとしてはそんなに大したことない選手だからね。いわゆるプロレスラーっぽくないっていうか。
そうは言ってもプロレスラーとして飯を食ってる以上,どこかで自分の存在価値を見出さなきゃいけない。で,結果的にプロレスラーっぽくないのを逆手にとって性癖で勝負してるっていう一面があってね。要は,身体と身体でぶつかり合う,そういうプロレスラーとして真っ当な試合ができないがゆえに,プロレスラーのみんながヤっていないような切り口のプロレスを提供することで,何となくここまで生き延びてこれたようなもんなの。
であるから,私は“普通”に対してアンテナを立てなきゃいけないのよ。私はみんなが思う普通の裏を取らなきゃいけないわけだから。だから,「何が面白いか」,もっと言うと「みんなが何を面白いと思っているのか」っていうことを考える癖がついてしまっている。これが先ほど言った“職業柄”の正体。てなわけで,映画を見ても本を読んでもゲイムをプレイしても,「何が面白いのか」を考えちゃう自分がいるって話なの。
言い換えると分かりやすいかな。ゲイム性はさほどないのに,ついプレイしちゃうゲイムってあるでしょ? 携帯電話でプレイできるゲイムにも,そういうものは多いわよね。まあ,最近のスマホゲイムはその限りではないけどね。
ホラ,一時期はやっていたでしょ。行動力を消費してステージ進めていって,カードを得てカードを合成してパワーアップして……ってゲイム。ぶっちゃけゲイム性としてはさほど高くないけど,ついついプレイしちゃうわよね。
あれ,何が面白いかっていうと,世界観とコレクション性さえしっかりしていれば,プレイヤーがゲイムをプレイしてる気になれるってところだと思うのよ。自分がその世界に入り込んでいる感,自分が何かを集めてる感。押さえるべきポイントはここ。ゲイムとしての遊びを,極限まで削り落とした形よね。
で,白夜王国はというと,これまた“ついプレイしちゃう”ゲイムなのよ。ただし,こちらは押さえているポイントが前述の例とは違う。要はテンポが異常にいいってことなんだけどね。ステージにもよるんだけど,一章進めるのに30分はかからない感じ。ものによれば10分とか15分。
なぜここまでテンポがいいかと言うと,そりゃまあシンプルに削るべきところを削ってるからなんでしょうね。とはいえ,ちゃんとファイアーエムブレムしている。ということは,ファイアーエムブレムの何が面白くてどこを残すべきかを,作り手がしっかり把握して自信を持って作っているんでしょう。
何が言いたいかというと,「ただ量を増やせば面白いってわけじゃない」ってことなのよ。今までのゲイムって,ボリュームを増やすことが良しとされてきた部分もあるじゃない。でも,必ずしもそうではない。クリアまでに必要なプレイ時間が100時間のゲイムって,確かにボリュームはあるわ。でも,今の時代,そのゲイムで最後までたどり着ける人って,そこまで多くないと思うのよね。
だったら総プレイ時間は20時間だけど5回遊べる,10時間だけど10回遊べるようなゲイムを提供する。これもまた一つの楽しませ方だと思うの。どっちがいい悪いじゃないわよ。世の中にはいろんな娯楽があふれていて,プレイヤーの価値観も多様化しているわけだから,ゲイムとしての在り方も多様化してしかるべきだと,私は考えているしね。
で,シミュレーションRPGという,比較的ボリューム勝負になりがちなジャンルで,あえて重さよりも軽さで勝負したのが白夜王国なのかな,と。そしてその選択は,決して間違っていないのだなと,プレイしてみて思ったのね。あ,もちろん人によって好き嫌いはあると思うけどね。
“ついプレイ”して,その積み重ねで結局長くプレイしていたっていうのが,今回の白夜王国。そのためにテンポが必要で,そのための工夫が凝らされてるわけね。でも,テンポが良すぎるだけだとゲイムとして単調になるから,ステージ間の遊びも充実させたのだと感じたわ。すべてはテンポありき。
つまりこういうこと。テンポの良さの弱点である単調さを,自分の拠点を育てる「マイキャッスル」という要素で埋めた。ボリュームという弱点を,別の視点から描かれた異なるシナリオで埋めた。そういうわけね。
これ,本当によく考えられたシステムだと思うわ。ゲイムシステムではなく,とくにパッケージの売り方という,いわばビジネスシステム。これも,強制的なものではなく,プレイヤーが欲しければおかわりもできるってシステムなわけで。作り手視点で言い換えると,プレイヤーにおかわりをさせるには,もっと遊びたいと思ってもらえるぐらい,面白いものを作らなければならない。それができる自信がなきゃ,こんなことできないわよね。
そして,ちゃんと面白いものを作ったわけだから,これ,作り手と受け手の関係としては理想よね。プレイヤーは面白さへの信頼にお金を払い,作り手は信頼にこたえてお金をもらう以上の面白さを提供する。お金を払う側としても,もらう側としてもかくありたいものです。
というわけで,今週はテンポがいいということを人は好む,ゆえにリズムゲイ……リズム芸が面白いとされる昨今の風潮に一言物申して筆を置かせていただきます。いや,別に否定はしないんだけどね。“面白い”にもいろいろあるし。笑えるってことだけが面白さではない。“リズムに乗れると心地良い”っていう面白さは「リズム天国」シリーズで証明されてるし。お笑いというジャンルでの面白さかどうかは,また別モノだけど。ただ,世に出た者勝ちでもあるのも事実。
このことは職業柄分析しつつも考えがまとまらないうえに,この連載でするような話でもないので,今週はこの辺で。今度こそまた来週!
今週のハマりゲイム
(文字通りゲイムスロットにハマっているゲイム)
PlayStation 4:「トロピコ 5」
PlayStation 3:特殊なDVD ※死亡確認→復活予定
PlayStation Vita:「不思議のダンジョン 風来のシレン5 plus フォーチュンタワーと運命のダイス」
PSP:「サモンナイト5」
Wii U:「ゼルダ無双」
Wii:「ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン」
ニンテンドー3DS:「ファイアーエムブレムif 白夜王国」
Xbox 360:「剣の街の異邦人 〜白の王宮〜」
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- 関連タイトル:
ファイアーエムブレムif 白夜王国
- 関連タイトル:
ファイアーエムブレムif 暗夜王国
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(C)2015 Nintendo / INTELLIGENT SYSTEMS
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